―視覚情報の重要性―
我々人間は外界の情報の多くを、視覚によって得ている。
その割合は8割とも9割とも言われる。
対人においてもそれは同じである。
容姿、服装、表情、所作、目に見える情報によって相手を認識する。
すなわち、視覚情報によって相手への印象をコントロールすることも可能なのである。



相手:33歳 大学病院勤務医 杏林大学卒
方法:婚活サイトPairs
場所:新宿のダイニングバー
衣装:ショートコート(Jewel Changes)、カーディガン(Max&Co.)、ボルドースカート(aquagirl)、パンプス(LOVE MOSCHINO)、バッグ(Givenchy)



珍しく筆者から入札した案件、I氏。
1カ月近く根気強くメッセージのやり取りをして、面接にこぎつけた。

突然の呼び出しに、意気揚々と出かけた筆者。
が、遅刻の知らせ。

20分後、待合せ場所に現れたのは
LOVELESSのピーコートにダメージデニム、シルバーのアクセサリー、アシンメトリーなツーブロックの茶髪という、チャラい系イケメン。
歌舞伎町にいても何も違和感はない。

低めの身長を差し引いても、医師というステータスを掛け合わせれば、相当値の張る物件とみる。



まずい・・・
自分で入札しておきながら後悔がよぎる。

筆者はイケメン、とりわけチャラい系イケメンが苦手である。

自身の容姿は中の下、そしてトウダイリケジョというディスアドバンテージ。
劣等感のかたまりである。
イケメンを前にすると、見下されているという被害妄想に苛まれるのだ。



新宿を庭とするI氏の見立てでお店に入店。
さてさて、着席。
コートを脱ぐと、やっぱりニットもLOVELESS。

気を取り直してお食事。
地震で揺れたり、雪がちらついたり、白で頼んだボトルが赤で来たり、とハプニングに見舞われつつも、それなりに楽しく会話をした。

I氏はイケメン医師であるにもかかわらず、おごることのない落ち着いた人間であった。
新宿を好むのは、自分のような人間でも受け入れてくれる懐の広さゆえ、と語る。

意外にも自己評価が低い。
筆者に通ずるもの感じる・・・


いやいや、そんなはずはない。
彼は遊びが過ぎてこじらせたチャラい系イケメン医師だ。
貧乏くじをひくはずがない。
内心、筆者をガリ勉ブサイクと見下しているに違いない。

また被害妄想である。



人は見た目が9割。
一大ブームを巻き起こした竹内一郎氏の著書は、非言語コミュニケーションの重要性について記したものであるが、
コミュニケーション以前に、やはり容姿や服装といった視覚情報は、相手の印象を大きく左右する。
初対面においてはそれがより顕著に作用すると考えられる。



おそらく筆者の脳は、衣装と髪型をもとに、無意識にI氏を“チャラい”人間と判断した。

モード系の衣装に免疫はあれど、チャラい系の衣装には免疫がなかったことも敗因の一つかもしれない。
サンプルが少ないために人格のバリエーションを予測できなかったのだ。

チャラい系衣装=チャラい人間

結果として短絡的な解を導いた。



相手にどういう人間だと思われたいか。
それに応じて衣装を身に着けなければならない。
改めて衣装の重要性を感じた。

筆者の衣装、ブレブレである。