6人目のT氏との出会い において、もう一つ考察したことがある。
期待値と実現値について。


筆者はT氏に会うことにあまり乗り気ではなかった。
顔のわからない写真、大学名のない学歴、ゆえに小さい彼の市場規模(いいね!の数)、堅いメッセージ、が理由である。
どんな人が現れるのか、正直不安であった。


しかし、現れたT氏に対する印象はとてもよかった。
昨年の出会いを勘案しても、おそらく1位。


なぜここまで好印象だったのか。




それには、低い期待値と高い実現値の関係が寄与しているのではないだろうか。




筆者含め多くの人間は得られる情報から相手の期待値を導く。
期待値はいわば平均値である。
ある確率で期待値以上の実現値も、期待値未満の実現値も存在し得る。


しかし、われわれは期待値に届かない実現値を過剰に低く、期待値を上回る実現値を過剰に高く評価する傾向がある。


福袋を例に考えてみよう。


初めて福袋を買うAさんは、事前の評判も手伝って、期待に胸を膨らませていた。
一方、例年ハズレばかりのBさんは、内容には期待せず話のタネにと考えていた。


朝から並んだAさんと、ふらふら訪れたBさんは、偶然にも同じ福袋を購入。

内容は同じ。


しかし、両者の反応は真逆である。
Aさんは期待はずれと落胆し、Bさんは想像以上に良い内容に嬉々とする。




実現値が同じでも期待値の大小によって、人に与える印象が大きく異なるということである。


出会いにおいても、実現値が期待値を上回る方が望ましいことは言うまでもない。


婚活サイトあるいは結婚相談所を想定すると、その期待値を導く情報は、写真とプロフィールである。


より多くの異性の目に留まるよう、奇跡の一枚の写真や、盛り気味のプロフィールを記載する人が多いことは容易に想像できる。


しかしこれは、机上での市場拡大には寄与するが、実物の評価を下げかねない行為といえる。




実現値をより高く評価されるためには、期待値が実現値よりも低い必要がある。


したがって、実現値よりもやや低めの期待値を導く情報を与える、これが有効な手法といえる。




ちなみに、T氏の期待値に対する筆者の実現値は、というと…


想像以上に声が低い。
想像以上に声がデカい。
想像以上に陽気。




声。


盲点だった。
確かに、わたしの声は一般的な女性の声から導かれる期待値に比べ、低くてデカいに違いない。