銀の匙 Silver Spoon 1巻 読了
イメージ 1荒川弘/著 小学館/刊 20110720初版419円 少年サンデーコミックス
 獣医系の学校だと、ちょっと前に人気を得た「動物のお医者さん」とか、今ならばドラマにもなった「獣医ドリトル」とか、週刊少年サンデー、北海道、馬と云えばゆうきまさみの「じゃじゃ馬グルーミンUP」など結構連想されます。が今作品はなんと云っても著者荒川弘自身は農家出身の農学校卒業者である点が作品の質をある意味リアルにしているのではないかと思われます。
 サンデーGXで読み切りを描いていたので、てっきり月刊誌系でガンガンと共に2本掲載するのかと思いきや、週刊誌で連載とは。お若いですね。絵柄を見ていて何故かイダタツヒコの描線を思い出しました。
 ニワトリをつぶすときの擬音として「コケッ」っと云うのがあります。いや、実際に「コケッ」と云うらしいですよ。拙者の母が子どもの時分に家ではニワトリをたてていて、世話係になっていたそうです。毎年年の暮れになると、母の父、拙者者の祖父がニワトリの首と捻ってつぶすのが恒例で、その際の描写を、母は拙者に雑巾を縦に絞るように両手を捻って「コケッ」と云います。その後首を割いて軒にぶら下げて血抜きをし、正月の雑煮の具材となったそうです。
 さて、本書において食品科の先輩がニワトリを鉈でつぶす際「…っと!」「ズン」「コケッ」と云う文字がコマの中に入ります。ニワトリの断末魔として「コケッ」というのか、首を切られて時に気管を空気が抜けて「コケッ」と云うのか気になります。気になるなら取材として然る場所へ見に行こうと思えば行けますが、自分からは行こうと思いませんねぇ。
 動物だろうと魚だろつと鳥だろうと、そして日本人にとっては植物であろうとも一つの命を食べて我々は生きています。これは「業」としか云いようの無い行為であり、自分も含めて「命」の尊さを噛み締めていただかなければならないわけですが、現代の高度な社会的分業制になっていて良かった、としみじみと感じます。拙者魚もさばけないんですよ。魚が釣り針にかかっても、自分が痛くて痛くて、まったくモーって感じです。日本人なら哺乳類を食べなくても生きて行けますが、魚と鳥をさばけないようでは、生きていくのが難しいかもしれません。
 ニワトリの卵の殻にはボツリヌス菌が付着している場合があり、産み立て新鮮だからと云って安全とは云えず、確率的問題として食中毒をおこすとか。それでも日本人は生卵のごはんかけを止めないでしょうね。日本人には「フグ」同様、食べる事にある種の「運試し」をしているような気配があります。より美味しい物を食べるにはそれなりのリスクが必要である、と認識しているのかもしれません。レバ刺しとか。
 ばんえい競馬はTVでしか見た事がありませんが、一度実物を見てみたいものです。普通の競馬ですら馬の疾走に感動しましたから、1トンの馬が1トンの荷物を引いてレースをするなんて見応えあるでしょうね。マンガで描かれている煙は「気」ではなく、馬達の汗が水蒸気として濛々としている様ですね。NHKのTV番組ではあんな感じでした。日本では馬肉用の馬は飼育されていないそうです。ではスーパーやお肉屋さんに出回る“サクラ肉”の出所は?
 まさに本書で描かれている通りなんですねぇ。
 そして本書と合わせて是非読んでいただきたいのが、当ブログでも紹介した写真集「ぶたにく」http://blogs.yahoo.co.jp/akamaty1000/60328404.html 2010/2/20(土)です。第7話春の巻⑦がリアルに感じられると思います。
 2巻目が既に発売中。1巻を古本屋で入手してしまいましたが、今後は新刊書で買う価値があると思いました。 

 内容紹介:日本中が大注目!荒川弘最新作!!超ヒット作『鋼の錬金術師』の荒川弘の最新作!大自然に囲まれた大蝦夷農業高校に入学した八軒勇吾。授業が始まるなり子牛を追いかけて迷子、実習ではニワトリが肛門から生まれると知って驚愕…などなど、都会育ちには想定外の事態が多すぎて戸惑いの青春真っ最中。仲間や家畜たちに支えられたりコケにされたりしながらも日々奮闘する、酪農青春グラフィティ!!
 【編集担当者からのおすすめ情報】:あの『鋼の錬金術師』の荒川弘先生がサンデーで週刊連載に初挑戦!その超話題作が早くもコミックスになりました!濃厚すぎる農業高校を舞台に、主人公の八軒勇吾が悪戦苦闘しながらも、命の大切さを学んでいく…汗と涙と土にまみれた青春物語です。前作のファンタジーとは、違った面白さが詰まっています。こんな時代だからこそ、絶対に読んでほしい。そんな作品です!(アマゾンより引用)
(週刊少年サンデー掲載)