イメージ 1鈴木みそ/著 エンターブレイン/刊 20090406初版620円 BEAM COMIX
 事故で生霊となってしまった“チョキン”が“ジェニー”“マンビ”と共に「地獄巡り」ならぬこの世の人々が金の亡者となる「銭地獄」を巡り歩く。数々の人間模様を見てきたチョキンも己の祖父の死とともに現世に復帰しようとしていた。長く続いた“物語”もいよいよ終幕。
 なんども繰り返して云っていると思いますが、鈴木みそはシッカリと取材をしたうえで、フィクションとして再構成する力量がとても上手い。どんな漫画家も取材はやっているし、情報収集を怠る事は無いでしょう。でもフィクションを描くとなると、あくまで素材ではあっても素材の美味さを引き立てるわけにはいきません。その点取材系マンガを数多く手がけてきたせいか、素材のエッセンスを上手く加工して、説得力を加味する技術が巧なのではないでしょうか。あとがきで本人も書いていますが、確かに伏線をもっと張っとくべきでした。それさえあれば文句無しの出来だったでしょう。だからと云ってマンガの魅力が欠けるわけではありません。ブレイクする作品ではありませんが、マンガというジャンルの魅力の一つを成果として目の前に結実させてくれた作品として、他の人にオススメできるだけの価値はあると思います。
 なんと云っても社会生活の中で一番身近にあり、そしてとても大事なものでありながら、単なる丸い金属に、印刷された紙に、銀行や郵便局が打ち出す数字に、何故人々が血眼となり、場合によっては命のやりとりまでしてしまうのか。考えれば考えるほど不思議ですよね。そして、最初に「金」を考えた人々って凄いと思いませんか?