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西門佳里/著 講談社/刊 20051005第1刷550円 講談社X文庫ホワイトハート
 人の魂を向こうの世界へ送る役目を背負う「鍵猫」になってしまった黒い仔猫ニケの物語。
 

 166pまで読んだ次の日の朝、低血圧の私は出勤前の日課であるシャワーを終え浴室から出てくると、猫の鳴き声が聞こえました。私の部屋は4F建てアパートの最上階にあり、猫の声が聞こえたとしても遠くに聞こえるのが常なのに、このときばかりはとても近くから聞こえました。どこぞの窓でも開けっ放しにしてしまったかな?などと考えていると、一人暮らしの台所に何やら気配が。ニャーっと黒い仔猫(乳児幼児ではなく正に子供の猫)が角からあらわれたではありませんか。

 田舎で玄関や勝手口を開け放っておくと猫が侵入することがあります。音を立てずに、正に猫足なわけですが、気配ばかりは感じるので猫に目を向けると、猫は硬直したままニラメッコを始めます。そしてコチラが歓待の意思をもっていようと動いた瞬間逃げ出します。今までどんな猫もそうでした。

 私の目の前に現れた仔猫は私を見つけると、すぐさま近づいてきました。さも今まで、誰もいないのかニャー?いませんかニャー?いたニャー、よかったニャー、という感じです。

 しまった、呼んだ(読んだ)か!
 というのが正直な感想でした。
 
 皮紐に鈴をつけて毛並みもつややかなので、飼い猫であるのは間違いなく、いままで4Fの気安さからいつもベランダの窓の隙間を空けていましたが、でも猫が入ってくるとは思いもよりませんでしたねぇ。猫と遊ぶのは楽しいですけど、出勤時間も迫っていたのでベランダに退去していただきました。しばらく、入れてくれニャー、とガラスをカリカリさせていたようですが、私はそのまま家を出て行ってしまいました。


 真正面から命を物語わけですから、悲しくもありますが、読了感は清々しさすら感じました。秋の夜長に一人で読書するにオススメ。