イメージ 1

 上野東京国立博物館http://www.tnm.jp/jp/servlet/Con?pageId=X00/processId=00
で開催中。8月27日日曜日を最終日に控えた26日土曜日でなおかつ夏休み最後の土曜日ということもあって混んでいました。若冲と江戸絵画展とはありますが、メインはあくまで江戸の絵画史であり、若冲が目玉ではあっても展示全体の五分の一にも満たない数しかありませんでした。しかもその若冲に人が集まるものだから見えるのは人の後頭部ばかりという状況になっていました。私が入ったのは相棒の仕事の都合もあり午後昼食をすませてからの遅い入館でした。それでも普通に列にも並ばず入れたのですが16時近く退館する際には入場制限が行われ行列が出来ていました。もしこの文章を読んでから行く人は開館同時入館をオススメします。最終日はとても混むことでしょう。
 若冲は長くマイナーリーグの人でしたが、アメリカの好事家のおかげで逆輸入の形でマスコミに取り上げられ人気を博するようになりました。外国人によって認識を改められたと思うような考え方もありますが、私は若冲を好きなマニアによって顔が出来たために“物語”という付加価値のためだと考えます。作品のみで勝負・評価されたいというのが作家達(特に私が接触した作家達)の思いではありますが、人々に受け入れられるにはその作品と著者の物語とか、著者不明の場合はその作品の遍歴などが物語りとして人々に繰り返し語られ認識されることにより芸術品として受け入れられるのではないでしょうか。
 若冲は残念ながら作者自身の物語性が薄い作品群でした。そこにアメリカ人でありながら日本美術を愛してやまず、趣味を高じとうとう自分の美術館を作ってしまいました。しかも日本画研究者への情報提供を惜しまない、これらの点が現在進行形の物語を拡大再生産していったのでしょう。
 さて会場の一コーナーでは、展示方法を従来のスポットライトから、日本画が描かれた「襖」や「屏風」「掛け軸」が置かれたであろう日本家屋の照明を模擬的に横照明と明度の調整による時間経過をシュミレーションしています。画期的展示だと思います。これをさらに進め、入場制限予約制にしてでも茶室や日本家屋の再現をした上で是非展示し、まるで他人の家に招待されたように展示を楽しむまでにしていただきたいものです。
 照明や日本絵画の鑑賞方法については若冲収集家もNHKの番組中で語っていました。またコンビニエンス「am/pm」で無料配布されていた「TOPPAN」製フリーDVDマガジン「CODE NEO」Vol.2の中でも渡日し浮世絵の刷師のインタヴューで「正しい浮世絵の鑑賞法」を語っていました。
 かつての日本家屋に住んでいる人が、現在の日本でいったい何人いることでしょう。21世紀の日本の建築物は和風であって和式ではありません。もはやかつての日本を再現することは不可能でしかありません。浮世絵が浮世絵として存在した環境が最早変化してしまいました。ヨーロッパ人がいくらローマ帝国に郷愁を持ちながらも一神教になってしまった現在多神教の帝国へ逆戻りできないのと同じです。
 博物館では昔と今では同じ日本ではない事を疑似体験させることが重要なのではないでしょうか。