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神林長平/著 早川書房/刊 20050831発行700円 早川文庫JA810
 押井守、士郎正宗そして神林長平の熱烈愛好家と云えばだいたいその傾向がわかっていただけるのではないでしょうか。議論の為に議論をするようなオタクですね。世界生成の謎とか時間とは何かみたいな絶対答えが出てこない話を延々としているのが好きな連中。かと言って物理学や天文学を本格的に勉強せず、間違ってもさわやか体育会系のイメージが湧いてこないのは偏見ですか。
 神林長平の雑誌掲載短編はなかなか書籍にならないのに気がつき、また加筆訂正がおこなわれることも多いので、なるたけ見つければすぐさま手元に残そうとしています。この文庫本に6短編がおさめられていますが、初出SFアドベンチャー1989
年1月「鏡像の敵」は知りませんでした。
 そう云えばNHK新潟で製作され地元で放送された神林長平の番組があるとか、戦闘妖精雪風のイラストレーター横山宏画集に一文書かれていましたが、未見のまま早幾年。死ぬまでには見たいと思っています。
 既に神林ファンには無意味ですが、初見の人にちょっと解説。
 「ハイブリアンズ」は主人公は違いますが、同じサイボーグの設定で何篇か書かれています。
 「兎の夢」に出てくるPABは「帝王の殻」にも似たような設定があります。また「あなたの魂に安らぎあれ」を先に読むか後に読むかで、読む感触が変ると思います。
 どれも独立した作品として面白いですから何を読んでから何を読めというわけではなく、どの作品も明らかに同一のテーマが行間の深遠に存在する手応えを感じつつ、微妙に切り口の感触が違い、かつ小説ならではのエンターテイメントとして面白い素晴らしい作品群です。二十年経とうと色あせない面白さがあります。川又千秋の解説やこの文庫の末に書かれている桜坂洋の解説がまた、同業者からみても面白いというのが伝わってきます。
 神林長平作品の伝道者として是非とも私の感動を多くの人に味わってもらいたいものです。