麻痺人格らしきヒロくん

先日、かねてより約束していた
海に
彼と行った

サバイバーヒロ
も以前誘ったら
一緒に行ってもいい
とのことだったので
彼も一緒に



まずヒロくん

以前約束していた

海に行こうか?

と言うと

驚くほどの喜びよう

あー
楽しみにしていたんだな

約束を果たすのが
遅れてごめんね

表面的には
あまり出さなくても

寂しさや
期待などを
持っていたんだなと
改めて感じた

切ない気持ちになった

そんな風には全然見えなかった


今度は
サバイバーヒロ

探すが見当たらない

あれ?

どういうことだ

チャンネルを彼にしっかりと会わせようとすると
布団の上で上半身を起こして
静かにしている
彼の様子が
半透明で浮かび上がる

半透明

消えかかっている...

この時
彼がもうすぐ消えていくだろうことを
感覚が告げてくる


二人と一緒に海へ

その前にキッチンに立ち
名料理人のアイデンティティーにして
お弁当を作る

これを三人で食べよう


家を出る

サバイバーヒロは
全身縫合中であまり動けないので
俺が背負う

ヒロくんの方は
自由気ままに
いつものごとく
道端の草や石や
はたまたプラスチックの破片や
拾ったり
じーーっと見たりしながら

でもはしゃいでいる

そんなことしながら
はしゃいでいる

嬉しそう

興奮している様子


背中のヒロは
半透明でグッタリして
静かにしている

電車に乗り込むと
ヒロくんは靴を脱いで
座席に膝をついて
外の景色を食い入るように眺めている

ヒロも座る

俺も座る

電車を乗り継いで

しばらく歩き
海の潮の香りが

波の音が
聞こえてくる

その間も
背中のサバイバーヒロの気配が
なんだか薄くなっているのを感じる


前方が開けて
180度海の
絶景が広がる

きゃー

奇声をあげながら
波の方へと走ってい行くヒロくん

波にさらわれたりせんだろな

心配になる俺

ヒロくんの様子を見ながらも
ビーチパラソルを用意し
マットを引いて
ヒロを寝かす

大丈夫か?

声をかけるが
反応は薄い

ますます消えていきそう


お前、消えていくのか?


遠くを見ながら
動かないヒロが
微かにうなずいたように感じる

そばに居てやろう


波打ち際で
きゃっきゃ
とはしゃぎ回るヒロくん
を眺めながら

サバイバーヒロの横に腰を下ろし
一緒にたたずむ


短い間だったけど
お前の面倒が見れて
嬉しかったよ

声をかける

こちらを見るヒロ

もう今にも消えてしまいそう


その時がきたら
また会おう

必要なら
いつでも還っておいで

俺はお前の事を
覚えているから


遠くを見ているヒロ


その時
麻痺人格ヒロくんの鳴き声が

振り向くと
波打ち際で
胸から下まで
びしょびしょになりながら
泣いている

高い波がきて
ずぶ濡れになって
ビックリしたのだろう

駆け寄って
ヒロくんを抱えあげ

大丈夫だよー

声を掛けながら
背中を軽くをたたいてやる

大丈夫、大丈夫

服を着替えさせてあげようと
ビーチパラソルの方を振り返ると
サバイバーヒロがいなくなっている

ヒロくんを抱えながら
サバイバーヒロの気配を探ってみるが
感じられない

行ってしまったようだ


ありがとうヒロ
いつか必要な時がきたら
また会おう

心の中で声をかける

結局一緒にお弁当は食べられなかったな

俺の中で
えもいわれる、寂しさのような
罪悪感のような感覚が走った


ヒロくんは
パンツ一丁になりまた探検に

俺も一緒に探検する

貝殻や
蟹や
海草や

ヒロくんにとっては
夢のような
不思議なものでいっぱいの場所

観て、触って
一緒に楽しむ

あんまり俺の方は見ない
ヒロくんから働きかけては来ない

俺は珍しそうなものを拾っては
彼に見せて上げる

お昼になると
一緒に昼食をとる

パクつくヒロくん

食べ物がこぼれてるって

くちの回りもべたべた

拭いてやる

やっぱりちっちゃいからか
すぐお腹いっぱいになっちゃうみたい

食事が終わったら
また遊びに行くヒロくん

しばらくして
戻ってきて
そのままウトウトと
眠りにつく

疲れちゃったようだ

では
もう帰るか

真夏の陽気の海に別れを告げ
ヒロくんを背負って
家を目指す

君の面倒が看れて
嬉しかった
サバイバーヒロよ