「代償」「悪寒」と立て続けに読みました。伊岡瞬。

どちらの作品も、なぜ?と言う問いを発せざる負えないシチュエーションがあり、問いの解を求める運動が読者をグイグイと作品に引き込む。
何にも無いような日常の中に、その背後には薄皮一枚めくれば、めくれてしまえば、暴力が、悪が、ひしめいていて、それが吹き出してみると忽ち翻弄されてしまう姿が展開される。

見ていた、見立て、フレームとは違う世界が現実に入ってきて、その侵入してきた世界の理論を知らないと、見破らないとその悪夢から、危機からは逃れられない、と言う推理小説の仕掛けはエドガー・アラン・ポーの「モルグ街の殺人事件」からの黄金の骨子ですね。混沌にしか見えない世界に理性の光を与える。

「悪寒」は、イーデン・フィルポッツの「赤毛のレドメイン家」、道尾秀介の「シャドウ」に似ているような。
立て続けに同じ作家のシリーズものではない作品を読んだのは久しくないでしょうね。

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