ブルー☆の窓

ブルー☆の窓

* 夢とうつつのあわいをさまようストーリーをおもに “円形広場” “幻” “断片” などで

*物語の登場人物は、すべて〈架空の存在〉です

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☆ 架空の物語 「円形広場」 「断片」 「~幻」 などをメインに更新しています。
 ( 「円形広場 」 は、最終章の直前で、事情によりストップしています。 )


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✩ ブログタイトルとHN、短くしました。(旧タイトル&HN「ブルカニロの窓」)      







    " 多眠症の子どもたち "




    薔薇園にいたんだ

    真夜中の太陽の下
    花たちと笑っていた

    だれかに名前を呼ばれた
    ふり向いてみたけれど
    そこには白い蝶しかいなかった

    蝶は羽ばたくたびに
    小さな秘密をひとかけら落としてゆく
    ぼくたちはそれを拾い集める

    そして眠るたび
    少しずつ星に近づいていく


    花たちは知っている
    朝が来るたび

    ぼくたちがひとりずつ

    夢の側へ置き忘れられてゆくことを

    だから薔薇は夜ごと
    赤い松明を灯し
    帰り道を照らしていた


    目を覚ました朝
    枕の下に一輪の薔薇があった
    それが夢の証なのか
    ぼくたちには
    もうわからない













    * 花の国へ *  

        (" 従兄弟の隅窓に " 番外編)





従兄弟はときどき、 遠い何かを見つめていた。
夕暮れの庭で、 薔薇の香が濃くなるころになると、 遥かな呼び声を聴くように目を細めるのだ。

ある日、彼は微笑み言った。
「花の中に紛れて眠りたい」

それは冗談のようで、 夢の続きを口にしたようでもあった。
けれど僕は、 胸の奥でひそかに震えた。
花は美しすぎる。
白い花びらは月の欠片のよう、 紫の影は夜よりも深く、 香りは記憶をとろけさせてしまう。

そんなものに囲まれ抱かれたら、 従兄弟は本当にこちら側に戻ってこられなくなるのではないか。

朝になれば、 寝床には誰もおらず、

ただ薔薇の茂みの奥で、 ひとつだけ見知らぬ花が咲いていて、その花弁の重なりのどこかに、 彼の微笑みが隠れているのかもしれない。



従兄弟は幻視者だ。
雲の裂け目に城を見つけ、 葉末を渡る風に音楽を聴き、 誰も知らぬ存在の名を語る。
だから僕は恐れる。
夢を見る人は、 いつか招かれる。
花の精霊たちは、 きっと彼を愛するだろう。

夜露の王冠を載せ、 白薔薇の寝台を与え、 香りで紡いだ言葉を囁き、

「こちらへおいで、美しい子」
と呼ぶだろう。

そのとき彼は、 振り返るだろうか。
僕の名を覚えているだろうか。

それとも花々の陰で、 星の光のように淡く笑いながら、 自分が人だったことを忘れてしまうのではないか。


だから僕は、 彼が「眠りたい」と呟くたび、 どうか目覚めて帰ってきますようにと、密かに祈る。

花の国はあまりに美しく、
時として、 夢見る人々を連れ去ってしまうから。

















    " 月光の園で "



    今は重さを持たない
    恐れも痛みも
    夜露のように
    銀の草葉のあいだに消え

    月は蒼く
    透きとおる光を降らせる
    花々は眠ることを忘れ

    炎のように咲き

    風は香りを運ぶ

    そのひとは
    ただ漂う
    足もとに道はない
    行き先もない

    どこへ向かう必要もない
    こんなにも心は軽い
    世界はすべて赦されている

    失われたものも

    言葉にならない涙も忘れる


    月は
    ただ静かに照らしている

    花々のあいだから
    透明な存在の奏でる旋律が流れる

    そのひとはその調べに身を任せ
    夜空を泳ぐ一枚の花びらになる

    歓びはひそやかに輝くものだった

    胸のなかで
    幾千もの星が羽ばたいた

    月光の花園で
    透明なひとはただ楽しむ

    風になり
    香りになり
    光になり

    夢の終わりが近づいても
    その歓びは消えない

    月の雫のように
    輝きを抱き

    そのひとは舞う