「巨匠とマルガリータ(下)」ミハイル・ブルガーコフ /水野忠夫 訳 | 藍色の傘

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一日中、猫を膝に乗せて、本を読んで暮らしたい。

⠀「巨匠とマルガリータ(下)」
ブルガーコフ作 / 水野忠夫訳




マルガリータは空を飛び、502号室では悪魔の舞踏会が開かれ、モスクワの街は燃え、月は高く輝き、行くべき道を照らす。

上巻の圧倒的な熱量に比べ、下巻はやや失速した印象があるが、それでも見事な完成度で、31章あたりからは感動すら覚えた。

終始、熱に浮かされて見る悪い夢のような展開だが、夢ならいつか醒める時がくる。
現実には悪魔のような体制の支配からブルガーコフが解放されることはなく、無念のまま生涯を閉じたが、彼の信念の通り「原稿は燃えない」のだ。

ブルガーコフが1928年から書き始めたこの作品は、1940年に48歳で彼が病没するまで12年の歳月をかけて推敲を重ねて完成したものだが、生前一文字も世に出ることはなかった。
ゴルバチョフが行ったペレストロイカとグラスノスチのお陰で、やっと日の目を見ることができ、以来「20世紀の最高の文学のひとつ」と賞賛されている。

2022年の、日本の小さな家の小さな部屋で、小さな日本人がこの本を読んで、こんなにも心を動かされていることを、ブルガーコフに伝える術がないのがどうにも残念である。

〈余談〉
ストーンズの「悪魔を憐れむ歌」が実はこのヴォランドの歌だったという説があり、そう言われれば、確かにいかにも。
ミック、GJ。

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