これも子供の頃の記憶から

 

少し刺激の強い内容かも知れないので、過激な表現を好まない方は下へ進まないほうが良いかも知れません

 

 

それはある日の昼下がりの事でした

 

今から50年以上も前の出来事だったので正確な日時は覚えていません

 

おそらく土曜日の午前中の授業を終えて、帰宅し昼食後に一人でオーチャードに向かって歩いていたのだと思います

 

私の家を出て、先日の「御用聞きのオジサン」がやっているお店の前を通り過ぎて歩いていると、建設中のホテルオーキッドインを右手に見ながら更に進むと左手にはマレー・カンポンがあります

 

「マレー・カンポン」とはマレー系のシンガポール人が大勢暮らす粗末な木造りの高床式家屋の集まる小さな村、という感じのエリアになります

 


椰子の木陰にカンポン

 

もちろん中国系やインド系の人達が混在して暮らしていたカンポンもありました

 

そういうカンポンはシンガポールの国中に数多く点在していました

 

以前紹介したDVDの「Long Long Time Ago 我们的故事」ではそこでの暮らしぶりが生き生きと映し出されていました

 

そのマレー・カンポンに差し掛かった時のことです

 

突然、子供の大きな泣き声が聞こえてきました

 

カンポンの高床式家屋の軒下に、小さな男の子が立ちすくんで叫ぶような声で泣きじゃくっていたのです

 

年の頃はまだ二歳か三歳くらいでしょうか

 

衣服は着ておらず裸のままでした

 

どうしてそんなに泣くのだろう、怒られたのだろうか?

 

悪さでもして親に叱られたのかな?

 

などと考えながら、火が付いたように泣き続けるその子の様子を凝視してみると…

 

なんと股間から血液が流れて真っ赤に染まっていたのです

 

何か事件でも起こったの?

 

目の前に見える衝撃の姿に、私の心は凍り付きました

 

と同時に「どうしたらいいのだろう」と考えていると

 

家の中からマレー系の男性が凄い形相で、手にタオルのようなものを持って出て来たのです

 

そして子供に対して、大声で話しかけながら 股間の周りの血液を拭き取りはじめたのです

 

どうやらそれは子供の父親のように見えました

 

彼は私が近くに居ることに気が付いたようです

 

私は何か見てはいけないものを見てしまったようで、視線を前に向けて そそくさとその場を立ち去りました

 

恐ろしかった

 

大量の血が流れ出ている子供の姿

 

何がなんだか判らない

 

一瞬の出来事だったのだけれど、とても長い時間に感じられました

 

そんな光景を見てしまうと、呑気にオーチャードへ出かけて行く気持ちは失せてしまい、カンポンから離れた道を選び、遠回りをして家に戻ったのでした

 

帰宅すると母に「こんなことがあったのだけれど…」と興奮冷めやらない気持ちを押さえながら、その時の様子を説明したのだけれど、

 

母は「何かの見間違いじゃない?」とあっさりした言葉を選んで、あまり気に留めないようにと言われました

 

恐らく母は「そのこと」ついて知っていたのかも知れないけれど、私には教えようとはしませんでした

 

私の父は大正生まれの気難しい人で、下々の事には興味を示さないタイプだったから、その話をすることはありませんでした

 

しばらくして父の会社関係の人が出張でシンガポールへ訪れ、その人は来星の度に我が家へ食事をしに来る人で、私とはとても仲が良く話しやすい人だったので例の話をしてみたのです

 

すると「それは割礼というイスラム教の男の子の儀式やで、えらいもん見たなあ」と教えてくれました

 

もっともそれ以上の詳細については触れなかったので、具体的な事は判りませんでした

 

でも、あれが父親が息子に対して虐待とかそういう類のものでは無かったのだ、という事を知ったお陰で心が楽になったように思います

 

実はLong Long Time Ago 我们的故事2」の中でも、そのシーンが映し出されていて、びっくりしました (汗)

 

 

割礼は英語でCircumcision、 マレー語でberkhatanと呼ばれるそうです

 

詳しい事はここでは記述しませんので、興味のある方はググッてみて下さい

 

現代社会に於いても割礼は行われているようですが、私が目撃したような親による処置ではなく、衛生面からもクリニックなど医療機関で施術されて欲しいなと思う次第です

 

こんな凄い体験をする事は近代的な今のシンガポールでは有り得ないでしょうね