世の中、すべてリズミカルに動けるわけではない
週に何度か新幹線を利用する
基本的に一人が好きな自分としてはとなりに誰かが座ることをまったく期待していない
そう、A席かC席しか選択しない
時として富士山をみたいがあまり、E席を選択してしまいそうになるが、俺的に一番優先したい"一人"がそれをさせないでいる
車輌の前から3番目の席に座るとイイことがあるとかないとか
今日、そのC席に座ったわけだが…
ベートーベンのジャジャジャジャーンをボリューム小で聴きながら、いくつかの本を同時並行型で読んでると…
何かが違う
どこか音に違和感がある
またまたiPhoneの不具合かとイヤフォンを外すと、ジャジャジャジャーンの音階とはまったく違う耳をつんざく轟音
車輌の前から1番目、そう二つ前の席
そこから聞こえてくるノイズのボリュームは恐らく最大
A席のひとMr.Aが涙目でやたら振り返ってみてきてるし…
ノイズを奏でているのはMr.BかMr.Cか…
ちなみに、車輌の前から1番目の席と後ろから1番目の席のB席は埋まりやすい
なぜなら…
コンセントがあるから
そんなあるあるはどうでもいい
尋常ではないその鼾…
鼾だと把握した瞬間、Mr.Aは轟音を奏でている張本人ではないことは理解した
そうなるとMr.BかMr.Cのそれになるのだが…
ピーとブーの二重奏
さまざまなパターンが繰り広げられた
それを鑑みると、Mr.B or Mr.Cではなく、Mr.B and Mr.C の可能性が高いことは火を見るよりも明らかだった
軽自動車クラクション鳴りっぱなし、クイズ不正解音鳴りっぱなし、それが相まったイメージだ
強弱や高低というものはそこにはない
音紋といえるものもない
Mr.Aの涙目は大きくうなづける
Mr.Aは平静を装いながらも咳を絞り出し、コンビニ袋を無駄にまるめ、とにかく「音」を立て始めた
永久不変
永遠無窮
切なさオンリー
大食い魔女のくま落としばりにA席で地団駄を踏んでいるMr.Aは少し窶れたようにみえた
ピクリとも動かなくなったMr.Aの心配をせざるを得なかったが…
!!
次の瞬間、「まもなく名古屋」のアナウンスが頭上に流れ、新たな展開に期待しかなかった
ただ…
その神の声により息を吹き返したMr.Aに対し、Mr.B、Mr.Cはピクリとも動かない
なぜだ…
神よ
もっとけたたましく音楽を鳴らし、もっと激しく訴えかけてくれ
神よ…神よ…神よ…
Mr.Aの嘆きは声に出ていたのではないだろうか
現実と願いは裏腹
怒りのやり場も見つからない
もちろん、そのタイミングでは依然として二重奏は奏でられていたわけで
しかし!!
ここで大きな動きがあった
急にMr.Cがカバンを持って立ち上がり、車輌出口に向かったのだ
え?
Mr.C?え?あれ?え?二重奏は?
全くの想定外だ
もちろん、そのタイミングでは依然として二重奏は奏でられていたわけで
まさか…
まさかだろ
いつもよりはやく自らも席を立ち、車輌出口に向かった
当然のごとくそのステージを覗くと、そこには堂々と二重奏を演奏しているMr.Bと憔悴しきったMr.Aが横並びに座っていた
Mr.Bは想定以上にいかつく、Mr.Aのあの可愛らしい抵抗は大きくうなづける
Mr.Bならぬ、Mr.二重奏Bは、決して終わりを感じさせなかった
切なさオンリー
Mr.二重奏B forever with Aを乗せた失望しか感じ得ないのぞみを見送りつつ、再びイヤフォンを耳に
あ、そうだ
そういえば …
そういえば"運命" だったな、だったんだよ