以前から暗がりを怖がったKさん。

暗いから怖い、とか、おばけが怖い、と言っており、

5歳くらいの年齢なら、そうだろうな、と思っていた。

 

だって私だって、田舎の祖母の家で夜、

トイレに行ったり、お風呂にひとりで入るのは、

記憶がある限り、小学校低学年か中学年、

親に、もうそろそろひとりで行きなさい、と言われるまで

誰かと一緒じゃなきゃ怖くて行けなかった。

 

田舎だから夜は真っ暗で、トイレのドアの目の前にあった

廊下の窓に映る姿を見るのが、本当に嫌だった。

 

だからKさんが夜、お化けが怖い、って言うのも

そういう感じだと思っていた。

暗くてたまに車とかの反射で光ったり、音がするのが

おばけがいるみたいで嫌なのかと。

 

けれど最近、そうじゃないことがわかった。

 

いつも母が寝かせてくれる時、おばけがいて怖い、

と言うそうなので、先日私が寝かせる時に聞いてみた。

その日もやはり、怖い、と言うので、おばけがいるの?と。

 

それに、うん、と答える息子。

どこにいるの?と聞くと、

(開いている寝室の)ドアの上のところ、と言う。

 

普段コンタクトをしている私には、ぼんやりとしか見えないが、

けれどそこにある暗い影は、確実に見えた。

だから私は安心しながら、

それは隣の部屋の電気だよ、と言った。

 

けれど息子は、

違うよ、あそこに赤ちゃんが見える、と言った。

怖いよ、と。

 

その答えにびっくりして、でもまだ半信半疑な私は思わず

目とか口とかも見えるの?と聞くと、Kさんは、

うん、泣いてるの、と言った。

 

普段 そういうのが全く見えない私にとって、

それはあまりに衝撃的で、そして同時に今まで

ちゃんとその“怖い”に向き合ってこなかったことを反省した。

 

夜が怖い、暗がりが怖い、というのは、Kさんにとって

本当に深刻な問題だったのに、私は

いつかはおばけなんかいないと理解できる時が来る、

きっと何かの夢をみたんだろう、くらいにしか

考えていなかった。

 

母がKさんを産んですぐ、ニュージーランドに来てくれた時、

天井を見て笑うKさんを見て、

この子絶対何か見えているわ、と言っていたけれど、

やっぱりその時からKさんには見えていたのだろうか。

 

次の日の朝、私が母に、

昨日は泣いている赤ちゃんがいたんだって、と言うと

うん、そう。ドアの上から頭が逆さまになって出てたの、と

まるで、道で友達に会ったの、と言っているような

テンションで言うKさん。

 

…そっか、これはKさんにとって、日常の出来事、なんだ。