原作は”黄色いハンカチ”:Memory of Pete Hamill (完) | アキートのブログ

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京都市中京(なかぎょう)区生まれ、現在北区在住で元大学教授のアメリカ文化研究家です。
アメリカの風俗・音楽・映画・料理などや
”京のまち”の 日常、今昔 について思いつくままに書いています。
どうぞお楽しみください。

 

故ピート・ハミル氏の "Going Home" が山田洋次監督の名作『幸せの黄色いハンカチ』の原作であるというお話を始めて3回目になってしまいました。

 

興味をお持ちの方はもう少しお付き合いください。

 

 "Going Home"のラストシーンで Vingo が見たのは、かしの木にはためく数百の”黄色いハンカチ”でした。

 

 

(Photo from Tony Orlando & Dawn's CD 

THE DIFINITY COLLECTION)

 

 

ところで、Tony Orlando & Dawn  "Tie a Yellow Ribbon round the Ole Oak Tree" の歌詞の方はと言うと:

 

 

"I'm comin' home I've done my time"

「ぼくは刑期を終え、家に向かっている」

 

と、Vingo を語り手に "1st Person Narrative" の型になっています。

 

 

 "Going Home"に基づいて書かれた歌詞ですので、話の経過は省略して、クライマックスの場面を見たいと思います。

 

 

"Now the whole damn bus is cheering

 

And I can't believe I see

 

A hundred yellow ribbons round the ole oak tree"

 

 

(バス中が喜びの声を上げている。

 

目を疑いたくなるが、

 

いつも見慣れたかしの木に100本もの黄色いリボンが見える。)

 

<アキート試訳>

 

 

"I'm coming home mmm hmm. . ."

 

となっています。

 

 

ここでも一本のリボンではなく、100本のリボンというところがミソですね。

 

リボンにせよ、ハンカチにせよ、この部分がぼくを含めた大衆に受けたのだと思います。

 

 

さて、やっとハンカチ/リボンの問題に辿り着きました。

 

 

 

時系列を追ってみましょう。

 

Pete Hamill の原作 "Going Home" のストーリーが New York Post のコラムに掲載されたのが1971年。

 

1972年 Reader's Digest にリプリントされ、アメリカ中で広く読まれるようになりました。

 

Reader's Digest  なつかしいですね。高校の頃は英語のリーダーの副教材として人気がありました)

 

 

その翌年の1973年、Tony Orlando & Dawn が歌った "Tie a Yellow Ribbon round the Ole Oak Tree" のリリースとなっています。

 

 

一方で、山田洋次監督の名作『幸せの黄色いハンカチ』の公開は1977年のことでした。

 

 

歌詞の中で Ribbonn に変わったのは、ぼくの推測にすぎませんが、

 

まず Handkerchief では、(1)単語が長すぎて、曲調やリズムに合いにくいこと。

 

"Tie a Yellow Ribbon round the Ole Oak Tree" も、本来は

 

"Tie a Yellow Ribbon around the Old Oak Tree" でしょうが、歌ってみると "around""round", "old" は "ole" と、リダクションを起こすのが自然ですし、 "handkerchief" では歌いにくいということもあります。

 

(2) Vingo が「語り手」ということで、彼が話すローカルな英語の発音に近づけたのかもしれません。

 

(3) アメリカでは、今ではハンカチを持って歩く人はほとんどな(トイレなどにもペーパー・タオルが普及している)、あまり馴染みがない。

 

(4)1949年、ジョン・フォード監督ジョン・ウェイン主演の西部劇 

She Wore a Yellow Ribbon (邦題、『黄色いリボン』)に使われているように、Yellow Ribbon  のイメージの方が一般によく知られている。

 

 

そんなことから、ハンカチはリボンに変わったのではないでしょうか⁇

 

 

山田洋次監督がこの歌を知っていたのかどうかは不明ですが、”黄色いハンカチ”は原作に忠実ということになります。

 

それと、日本人にとって、ハンカチは今も馴染み深く、持っていても、違和感ありませんものね。

 

 

もう1つ、Vongo の付けていた "ex-con mask" ですが、

 

"Going Home" のテキストの脚注では次のように説明されています:

 

"ex-con: con--convict; ex--forner "

 

英和辞典では「前科者」と出てきます。

 

昨今、アメリカ人も感染防止対策でマスクをする人も増えているようですが、マスクにはどうしてもこういうイメージが拭い去れない人もいるようです。

 

蛇足ですが "handkerchief" の複数形は "handkerchiefs" です。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

Thank you for your patience.

 

 

 

                     *

 

 

 

曇っていて、少し蒸し暑かったけど、去年に比べたら、ずーとましな夏です。

 

 

今日河原で見かけたのは 1羽のカルガモだけでした。

 

 

(器: 波佐見焼)

 

エビ入りタイカレー with  Shingha Beer   (homemade)

 

 

 

Thank you folks.