*** 「海外で働きたい」TOEIC400点台から一念発起 ***
伊藤:こんにちは。本日はお時間をいただきありがとうございます。今は外資系企業で英語を使ってお仕事をされている柏野さんが、以前は英語がそんなに話せるわけではなかったとお聞きし、ぜひお話を伺いたいと思いました。よろしくお願いします。
柏野さん:こちらこそよろしくお願いします。今は社内の公用語が英語という会社もありますし、英語への注目度が以前に増して上がっていますね。
伊藤:ほんとそうなんですよ。実は私も大学入学時には英文科を目指していたのですが夢破れ、そこから英語に関しては挫折の日々です。ぜひ、これまでのお仕事経験をふまえて教えてください。
柏野さん:新卒で就職したのは大手日系メーカーでした。英文科卒ということで、海外事業推進部への配属になりました。ただ、英文科卒といっても、英会話が流暢なわけではなくて……。英語の電話が掛かってくると「英語の電話です! 」と言っては先輩に対応をお願いしていたんですよ。TOEICも400点台でしたし。英語のメールは、読むだけでも一苦労でした。
伊藤:えーーー。今の柏野さんからは信じられません。先ほども、社内の方とイングリッシュトークをされていて。それもスピードが速い! 私、全然意味が分からなかったんですよ。では、いつから英語に対して意識が変わったのですか? そして、シンガポールで仕事をすることになったきっかけは何だったのですか?
柏野さん:英語に対する意識が変わったのは海外で仕事をしたいと思い始めた頃でした。入社当時から海外の販売会社の方とのやりとりが多かったんです。担当地域はアジアで、特に韓国とシンガポールの案件がメインでした。出向者や現地の方から話を聞いているうちに、自分も海外で仕事できるんじゃないかと思うようになりました。そのときに、初級レベルではなく、ビジネスコミュニケーションができる英語のレベルになるにはどうしたらいいのかと考え始めました。シンガポールを選んだのは、香港に並んで日本人の独身女性が働きやすいという話を聞いたからです。当時は外国人の現地採用も比較的受け入れる傾向だったのも後押ししました。23~4歳の頃の話です。
伊藤:転職に関しては、どのようにしたんですか?
柏野さん:まずは、シンガポールで働き始めるまでの月間スケジュールを作り、必要なスキルや出国からシンガポールへの引っ越し完了までを大まかな流れとして落としこみました。スケジュール通りにこなすには何の準備が必要でどれくらいの時間を要するのか、そして、一日の生活パターンの見直しに至るまでの計画を立てました。そうすると、最短で1年ちょっとで実現できそうだという目安がつき、それに沿ってまずは致命的なレベルの英語の勉強を開始しました。そのときに決めたのは、TOEIC攻略本は使わないこと。英語の勉強をするのは、TOEICでハイスコアを取るためではなく、英語力をつけることが目的でしたし、英語力があればスコアはおのずとついてくると思ったからです。 海外で働く上で英語のレベルを証明するTOEICスコアは重要ですが、スコアだけとっても、実際に身についていなければ、海外に行って困るのは自分です。まずは一番苦手なヒアリングとスピーキングの練習を中心に、語彙を増やすことに専念しました。リスニング系の学習ソフトもいくつか使いました。自分なりに大奮闘しましたが、今思えばあまりいい学習の仕方ではなかったのでしょうね。結局、目標としていた700点には届かず、履歴書に書ける最高スコアが610点だったんです。しかし、この結果に焦る時間も残っていませんでした。
*** 計画通り確実に行動、現地採用でシンガポールへ ***
伊藤:でも、一年で400点台を610点まで持っていったんですよね。集中されたってことですね。そして、勉強をしながらの転職活動、それはどんな方法で?
柏野さん:英語の勉強に関しては、朝と夜、通勤時間をフルに有効活用していたので、生活リズム的には順調だったと思います。転職活動は、実際に現地のエージェントとメールのやり取りから始めました。結果、現地での面接から採用までにかかった期間は2ヶ月くらい。就職先のオプションはいくつかあったのですが、結果的には当時の上司や関連部署のみなさんの取り計らいによるエージェント経由で、同じグループ会社に転職しました。
伊藤:確実に行動をしていますね。10年以上前くらいは海外への短期留学が流行っていましたよね。でも実際に海外に行く人は少ないし、海外で仕事をする人になると、私の周りにはほとんどいませんでした。特に女性は。
柏野さん:確かに、短期語学留学のブームはありましたね。私の場合は、スケジュールを作ったおかげで行動に移せたのだと思います。出向経験者もまわりにはたくさんいたので、ビジュアライズするにはいい環境でもありました。まぁ、実際に面接を受けるプロセスは、このために計画を立てて動いてきただけに緊張しました。まず人事部との面接があり、OKが出ると所属部署長との英語面接とその場でパソコンを提供され、日本語のドキュメントを英語化する試験がありました。最後は社長面接で、採用が決まりました。
伊藤:現地採用ということですね。
柏野さん:そうです。25歳のときです。
伊藤:単身でシンガポールに乗り込むという感じですね。アパートメントはどうされたんですか?
柏野さん:今でも交流あるシンガポーリアン夫妻の実家に空いている部屋があり、当面はそこに身を落ち着けたらいいよと言っていただきそちらに。とても助かりました。結局2年ほどそこで暮らしました。
伊藤:ご両親の反対は、なかったのですか?
柏野さん:母は「別に海外に住まなくてもいいんじゃないの? 」と言っていました。父は、私が5人兄弟の真ん中なので、「兄弟5人いたら5人ともそれぞれに人生があるから自分が決めた通りにやればいいよ」と言ってくれました。
*** 働きながらビジネススクールへ ***
伊藤:やはり、海外に行くというのは大きいことですよね。シンガポールでは何年働いたんですか?
柏野さん:25~30歳の6年ですね。
伊藤:英語のスキルはかなりアップしたんでしょうね。
柏野さん:英語を読めるようにはなりましたが、全体的なスキルとしては満足できるものではありませんでした。シンガポールで話される英語は、シングリッシュと言われていてアメリカやイギリスの英語とは会話で使われる文法が若干違うんです。その影響を受けるのが、ちょっと心配でした。また、仕事で使う語彙も限られていたので、特定の範囲の会話はできるけど、それ以外になるとてんやわんやで。
伊藤:というと、まだ何かをしようとしていたとか?
柏野さん:はい。シンガポールで働きながら、2年間イギリスのノーザンブリア大学のマーケティングの学位を取るためにビジネススクールの夜間プログラムに通いました。そこで、 分厚い英語の本を読んだり、リサーチをしたりしなければならない、とやることがたくさんあって、力がついたかなと思います。英語の読解力もこの頃にある程度ついたのだと思います。
伊藤:それは、何歳の時ですか?
柏野さん:帰国直前の29~30歳の時ですね。
伊藤:学位を取ろうと思った理由はなんですか?
柏野さん:事業企画、営業企画を担当していたので、経営陣のサポートに近い仕事があり、出向されている方たちと仕事をすることが多かったんです。ミーティングに参加すると、みなさん頭脳明晰で。私も勉強しなければと思ったんです。マーケティングに限る話ではありませんが、実践だけではこと足りず知識があってこそだと痛感したのがきっかけです。
伊藤:その前向きさ。すごいです! ところで、ホームシックになったりしませんでしたか?
柏野さん:日本には出張で頻繁に帰ってきていましたし、完全な一人暮らしというより、知人の家に住んでいたので自宅にいるような感じでしたから、あまり淋しくはなかったですね。
*** 帰国時は無職、2ヶ月で英語教材会社の広報に ***
伊藤:では、帰国しようと決めたきっかけは?
柏野さん:もともと5年を目安に考えていましたし、実際に生活をしてみるとこれ以上いたら、帰国するタイミングを失うと思ったので区切りをどこにするかを考えていたんです。学校の卒業論文提出のタイミングが2007年3月18日と、ちょうどよかったので3月末で 日本へ帰ってきました。会社にも、論文を提出して学位を取ったら日本へ帰ります、と伝えていました。
伊藤:決断が明確ですよね。きちんと学位も取って、今、セレゴ・ジャパンで広報として仕事をされている。ちなみに、帰国したとき、仕事決まっていなかったんですよね。
柏野さん:はい。インターネットやテクノロジー、Webに可能性を感じていたので、いい巡りあいでした。はじめて「iKnow! 」アプリケーションを見たときは、学習方法はアナログと思い込んでいた私にとって、かなりな驚きでした。
伊藤:求職活動は、どのくらいですか?
柏野さん:2ヶ月くらいですね。2007年3月末に帰ってきて6月に入社しました。
伊藤:ゆっくり休む間もなくですね。
柏野さん:確かにそうですね。
伊藤:セレゴ・ジャパンは、日本人の方は何割くらいなんですか?
柏野さん:約3割です。メンバーは多国籍ですが、営業、事業開発、広報など対外的な部署に日本人が多いです。
伊藤:社内で日本語を使うことはあるんですか?
柏野さん:ありますよ。ミーティングで英語ではうまく表現できないときは、日本語も使います。全員バイリンガルなので、細かいことは日本語の方が言いやすい場合もありますし。ビジネス上、言い間違いを直されるのはいいのですが、間違って伝わってしまうのは気を付けないと。なので、今は日本語を使わずにすべて英語で伝えられるようになるようにチャレンジしているところです。
伊藤:ところで、TOEICで900点を超えられていると聞いたのですが……。
柏野さん:帰国して3年くらい経った2010年3月にTOEICを受けてみたんです。テスト中、何問か分からないところがあり、感触的にはそれを差し引いたスコアだと思います。時間内に終わり、結果は935点でした。これが満点だと申し分ないのですが(笑)。
伊藤:おぉ。私には想像できない点数です。でもそれは、日常的に英語を使っていることの結果が点数になったということですね。今は外資の会社ですが、日系企業との違いはありますか?
柏野さん:ありますね。実は、シンガポールで働いていても日系企業にいたときは、日本の文化があったんです。その反面、今は日本にいますが、欧米の社風なのでスピード感があって意思決定が早いです。ミーティングで発言をしないと、厳しい言い方だと不参加同様と思われます。自分のプロフェッションの立場から、発言することはとても大切ですし。人と意見が違って当たり前、人と意見が違うことを問題視する人はいないので、働きやすいですね。
*** サービスが10社以上に取り上げられ ***
伊藤:では、御社の英語学習サービス「iKnow! 」について教えてください。
柏野さん:「iKnow! 」は、累計で100万人の人が使った実績があるサービスです。確実に英語の基盤を身に付けることができるので、無駄のない英語学習が可能な点が魅力だと思います。大きな特徴が3つあって、一つはリアルタイムで最適な学習スケジュールを提示するので学習すればするほど学習がパーソナライズされていく点です。これは他に類をみないことです。学習ナビゲーションがついているので、ログインするだけで「今日はこのコースを学習しましょう」というように、今、最も学習しなければいけないものから学習を薦められます。 ここまでパーソナライズされたサービスは、ほかにないですね。また、クラウドでサービスを提供しているのでパソコンだけではなく、iPhone、Android、iPadなどスマートデバイスで利用できます。どこでも勉強できることも特長です。学習コンテンツは、「基礎英語」、「ビジネス英語」、TOEICなどの「テスト対策」、トラベル英語などの「ライフスタイル&カンバセーション」、そして、ビジネスでニーズの高い中国語もあります。最新のニュースは、3月15日、「iKnow! 」で学習したことをベースにしたライブ英語トレーニング「iKnow! Live」の発表記者会見をしました。
伊藤:ちなみに、人気のサービスは何ですか?
柏野さん:TOEICはもちろん人気なのですが、「基礎英語」というコンテンツが並んで人気です。これは、3000の語彙(単語、フレーズ)をネイティブの音声、画像、例文を使って学習する内容です。それで、書き言葉の85%、話し言葉の95%をカバーできるんです。
伊藤:すごいパーセントですね。3000語って、どのくらいの数なんでしょうか?
柏野さん:中学、高校の義務教育で学ぶ語彙数と並びます。セレゴの学習コンテンツは、難易度うんぬんではなく、使用頻度の高い順に単語やフレーズを学べるように開発されています。 ブリテッシュナショナルコーパスという単語の使用頻度を分析するためのデータベースがあり、その中から抽出された単語をさらに日本人が使う英語にチューニングしているので、効率的に学習できるようになっています。
伊藤:実践的ですね。「iKnow! 」は、媒体でもよく紹介されていますが、取り上げられるポイントは何ですか?
柏野さん:学習アプリケーションの見た目の美しさや脳科学に基づいた学習メソッドや、ライフスタイルに合わせて学習しやすい点ですね。特に注目されるのは、学習コンテンツの豊富さと、どのレベルの方にも効果の高い学習を提供できる仕組みが整っていることです。1レッスンの中で、学習とクイズ形式の復習をします。クイズに正解しないと1レッスンが終わらないので、イコール、レッスンが終わった時には確実に記憶した状態になるんです。しかし、覚えたことは忘れていく。これはいたって自然なことです。その記憶の仕組みを活かし、反復学習を通じて確実に身に付けていくんです。5単語、10単語など1回のレッスンで学習する数を選ぶことができるので、短い時間で学習できることもポイントです。最近、媒体で紹介されているのは、3月15日の記者会見で発表した「iKnow! Live」の記事で、10メディア以上に掲載されています。
伊藤:10メディア! 広報としての仕事ですね。こんどポイントを教えてください。そして、「iKnow! 」は朝起きて、5~10分やるという習慣になるといい学習システムですね。
柏野さん:まさにそうです。以前、ユーザーさんのインタビューで、毎朝5~10分続けているという話が出ていました。短い時間で学習できるので続けやすいと言われることが多いです。
*** バンド二つを掛け持ち、私生活も充実 ***
伊藤:ログインするのが楽しくなります。今後、これまで以上に英語はできて当たり前になっていくと思うので私も再度チャレンジしたいです。では、ここからはプライベートなことを。週末はどう過ごされているんですか?
柏野さん:私は、バンド2つ持っていてアルトサックスとソプラノサックスをやっているので、週末はライブのリハーサルと練習ですね。
伊藤:バンドを2つ! なんてアクティブな。いつ頃からやっているんですか?
柏野さん:アルトサックスは、中学生のときに初めて触れて、シンガポールではビッグバンドに入っていたんです。ソプラノサックスは、Kenny Gの曲が大好きで、何かあると聴いて涙するほどだったので、自分で弾いてみたいと思い、去年から始めました。ライブを2ヶ月に一度やっています。4月7日にライブが終わったばかりで、次回は6月2日です。
伊藤:バンド名は?
柏野さん:カルテットがbbQ(ビービーキュー)で、JAZZバンドがMini Vanです。bbQはシンガポール時代に一緒にビッグッバンドをやっていたメンバーが東京にほぼそろったので再結成した管楽器のみのバンドです。Mini Vanは、荻窪で活動していたビッグバンドから派生したジャズバンドです。
伊藤:素敵ですね。でも2つのバンドってかなり忙しそうです!
柏野さん:でも好きなことですから、楽しいですよ。4月7日は、2つのバンドが両方でるライブだったので、掛け持ちしていました。
伊藤:ONもOFFもほんとアクティブ! 最近、趣味がないので私も何か始めたいな、と思いました。また、今日はお時間をいただきありがとうございました。英語に対する思いも再び強まりました。
編集後記
今回、取材させていただいたのは、広報ウーマンネットでは、英語部の部長をしていただいている柏野裕美さんです。英語は私にとって永遠の課題だったので、英語部を発足していただいたのは、とっても嬉しかったです。インタビュー中に、その理由を聞いてみたのですが、「広報ウーマンミーティングに行ったときに、みなさんとてもアクティブなので、何か一緒にできたらいいなと思ったことがきっかけです」と教えてくださいました。絶賛、活動中の英語部もよろしくお願いします。そして、「iKnow! 」相当楽しいです。そして、何より海外で働くという選択をした柏野さんの決断力に脱帽。とても刺激になりました。
<ライター:伊藤緑、企画・協力:広報ウーマンネット>
伊藤 緑
広報ウーマンネット代表。フリーランスライター・作詞家。
愛知県でOLとして勤務した後、作詞家になるために上京。1997年作詞家デビュー。作詞家以外の仕事もしたいと思い、ITベンチャー企業にて広報の仕事を3年半行う。2004年、フリーランスに。宣伝会議社の「PRIR(現:広報会議)」の外部ライターとして3年半、取材&執筆を行う。出会った広報担当の女性たちが非常にイキイキしていることに気づき、2006年1月、mixiに「広報ウーマン集まれ! 」というコミュニティを立てる。コミュニティに集まったり、取材でお会いしたりした方に声をかけ2006年11月、第1回広報ウーマンミーティングを開催。2008年1月、第2回ミーティングを開催し、現在に至るまで年3回の開催を続け、大阪、名古屋、福岡でも同ミーティングを行う。2011年からは、部活として英語部、写真部、くりえいてぃ部、なにわ部などを設立、日々、広報ウーマンとのコミュニケーションをとっている。
広報ウーマンネットhttp://www.pr-woman.net/index.html
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