え~と、エリオットについて書くのはすごい久しぶりですね。


前回、書いたのは『フロス河畔の水車場』についてですね。


The Mill on the Floss (Penguin Classics)/George Eliot
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19世紀イギリス女性を論じるうえで、家庭の天使像は省くことはできません。


これはつまり、女性の居場所は家庭のみであり、自らの意思を押し殺して


男性(夫、父親)に服従することこそが最大の美徳であるという考えですが


マギーも当然、19世紀イギリスに生きる女性として、家庭の天使としての義務を


求められます。



幼少期、トムが学校から帰ってきた時、ウサギの世話を怠ったことで


激しく叱責されるのですが、そのときにマギーが見せるパッション(情熱)


こうした天使像から逸脱するものと考えられます。



父親の破産がもう避けられないものであると分かると、マギーは現実の過酷さを


思い知ることになるのですが、このときに出会ったケンピスの自己禁欲の理論は


マギーに自らの意思を押し殺し、他人に尽くすことの重要さを知ります。



物語後半で語られるフィリップとの密会やスティーブンとの駆け落ちは


マギーの願望、欲望 VS 自己意思の否定


という構図で常に論じられます。




フィリップは父親の仕事敵。


スティーブンはマギーのいとこルーシーのフィアンセ。


トムはマギーが隠れてフィリップとあっていたことを知ると激怒。


未婚のマギーが既に結婚相手が決まっているスティーブンと駆け落ちした


という知らせを聞き、トムはマギーに絶縁状をたたきつけます。


そして、物語はある出来事により二人の和解が成立し、幕を閉じます。


何が起こるのかは、皆さんぜひ小説を読んで確かめてみてください。



私が初めてこの作品を読んだ時、初めてのエリオット作品だったのですが


物語を通して語られるマギーの精神状況、葛藤、苦難の描写は繊細かつ緻密、ゆえに


心に訴えかけてくるものがあります。


エリオットは19世紀のイギリス中部の豊かな自然描写をリアリスティックに描いたことで


知られてますが、人物描写にもこれは当てはまると思います。


この作品を読む少し前に、ブロンテの『ジェインエア』を読んでいたのですが


なんかブロンテとも通じるところがありましたね。