作家研究してると必然的に伝記を読む
ことになるわけですが、読んでみて驚いたのが
エリオットの恋愛遍歴!
ルイスとの不倫関係もそうですが、他にも当時の社会から
すると考えられないものばかり!
当時の社会は女性を家庭の天使とし、女性は男性に
従順で家庭の中こそが女性にとっての適所であるという
風潮があったわけですから。
まずエリオットは1842年に父とそれまで行っていた
教会通いをやめてしまい、そのことで父とは
疎遠になってしまうわけですが、
(父の宗教は福音主義)
これのきっかけとなったのが、エリオットの住んでいた
コヴェントリー周辺に住んでいた自由思想家チャールズ・ブレイ。
このブレイと恋愛関係になったとかならなかったとか?
で父が亡くなって、ブレイたちと大陸に行き、帰ってきたとき
もはやコヴェントリーに帰る家はなく、兄の家(兄はこの時
結婚してエリオットが住んでいた家とは別のところに住んでいた)
に居候。
その後、自立するためロンドンの出版社で働きながら
小説を書くまでの基盤を作っていくことになります。
出版社なわけですから、多くの人(主に男性)が訪ねてくるわけです。
エリオットはここでまずハーバート・スペンサーに恋します。
ですが、これは一方的な片思い。
それが失敗すると、次に出版社の主であるジョン・チャプマンと
関係を持ちます。
これは相思相愛だったようですが、問題はルイスのときと同様
チャプマンが結婚していたということ。
結局、チャプマンと家政婦の不満、怒りを買い、家を追い出されてしまいます.
で、この直後に関係を始めたのがルイスだったわけです。
エリオットはルイスとは知り合っていましたが、すぐに恋愛関係には
至らなかったようです。
彼女の伝記によればルイスは「まるで猿みたい」でお世辞にも
ハンサムとはいえなかったみたいですね。
でもエリオットはルイスが亡くなるまで
ずっと結婚は出来ませんでしたが一緒にいることになります。
ルイスが亡くなるとまたすぐに別の男を作っちゃうんですけどね(笑)
この男というのがエリオットの伝記を書いた
ジョン・ウォルター・クロスです。
彼とは結婚しますが、結婚生活は一年経たずに、
エリオットの死(1880年)で終わってしまうことになります。
要するにエリオットは60歳くらいになっても恋すること
を忘れない女性だったんですね。
これには正直驚かされました。
ルイスは知性と学識という点ではエリオットよりも
劣っていましたが、エリオットが作品の
評価に敏感であることを察すると、
作品評が小説執筆のモチヴェーション低下に繫がらないように、
世間の作品に対する悪評から守り、
常にエリオットの良き理解者であり続けました。
これまでに書いたように、エリオットの作品には
幼い頃の宗教に対する信心と福音主義からの別離。
それによって家庭関係にもたらされる亀裂。
それによる主人公の苦悩、葛藤。
男性との駆け落ちによる社会からの非難。
主人公の良心、道徳的問題。
これに当時の様々な社会問題、状況が描き出される
わけですから、必然的にプロットは複雑になるわけで、
さらにエリオット自身が扱うテーマが
中にはユダヤ人の解放問題などと一言では済まされない
壮大な問題もあり、読み込むのには相当の時間を
要します。
まあ、でも文学や本を読むというのは
一生物の経験ですから、時間を苦にせず
じっくり味わいたいと思います。