なぜ金融緩和は失敗するか(1)  成長もインフレも引き上げない | ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

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ロンドン・東京そしてNYといつの間にかいろんなところを転々とそしてまた東京に。海外なんて全く興味なかったし今もないという予想外の人生でした。今は東京に戻りしばらくお休みしていましたが少しずつ再開してみようかと思ってます。よろしくお願いします

なぜ金融緩和は失敗するのだろうか。難しく考える必要はなく、経済成長というのは経済の供給能力できまる。生産性・労働力人口・資本蓄積などによるわけだ。お金を刷れば経済が良くなるのならばどこの国もそうしているはずだが、人類の歴史以来お金を刷ってろくに仕事もせずに豊かになった国などないから(まあ普通に考えれば誰でもわかるはずだが)お金を刷ることが経済成長につながると考えるのはおかしい。

もちろん、100歩譲って、急激な景気後退があった時に、金融緩和でお金を刷って市中にマネーがまわしやすくしショックを和らげるということには効果はあるかもしれないがそれは短期的にしか続くものではない。いくらお金を刷ったからといって長期的な経済の成長力が上昇するわけではない。

いやいや、金融緩和は失敗してないぞという人もいるかもしれないが、過去20年日本は緩和を続けてきたが経済成長は停滞しインフレになることはなかった。ユーロ圏も金融緩和を続けているが経済は停滞。唯一持ちこたえていたドイツ経済も雲行きがかなり怪しい状態でデフレの領域も見えてきている。一部のリフレ派が称賛していたアメリカも金融危機以降の経済成長は2%を若干超える程度でありインフレも1%台の伸びに過ぎない。





(世界経済のネタ帳 より)

なぜ金融緩和はうまくいかないのだろうか。少しややこしくなるかもしれないが次のように考えてみたい。

フィッシャー式 というものがある。

名目金利=実質金利+期待インフレ率

という式だ。中央銀行は名目金利を操作できるので名目金利を下げればインフレが起こせる。あるいは成長を加速させることができると一般には言われる。

だが、最初に書いたように長期では実質の経済成長を金融政策によって操作することはできない。金融緩和で一時的には経済成長は回復するかもしれないがそれが長く続くことはない。

一方でフィッシャー式の実質金利は≒実質経済成長率(≒潜在成長率)と考えることができる。とすると上の式では実質金利はこの式にかかわらず一定ということになる。

とすると、名目金利を中央銀行が引き下げると何が起こるだろうか?右辺と左辺を一致させるためには期待インフレ率が低下するしかない。金融緩和で経済が成長しないのは理屈の上でも実際に今世界の先進国で起こっていることを見ても明らかだ。

一般には金融政策でインフレ率を操作することは可能とされる。そして金融緩和でインフレ率は上昇するといわれているが、金融緩和によってインフレ率は低下することがフィッシャー式からは導き出される。そして緩和をいくら続けてもインフレ率が上がってこないという世界の先進国で起こっている事象とこれは一致する。

短期的視点で金融緩和でインフレ率は上昇するのだという言説が主流を占めているが事実とは必ずしも合致していないように感じるのは僕だけだろうか。