雇用促進税制って意味ないだろう | ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

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ロンドン・東京そしてNYといつの間にかいろんなところを転々とそしてまた東京に。海外なんて全く興味なかったし今もないという予想外の人生でした。今は東京に戻りしばらくお休みしていましたが少しずつ再開してみようかと思ってます。よろしくお願いします

http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/101117/fnc1011170131001-n1.htm

雇用促進税制、「雇用保険者」が対象 非正規に拡大、政府税調方針


雇用・雇用うるさい菅直人。国民向けのアピールにこんな政策を思いついたらしいけど、これ、たぶん、まったく実効性がない政策になると思う。


雇用を拡大した企業に一人当たり最大20万円の法人税控除を認めるという内容らしいけど。意味がないと考えられる理由をあげていく。


まず

①すべての企業は現時点で利益を最大化すると思われる労働資本への投資(雇用)を行っているはずだ。

すなわち、すべての企業はすでにいっぱいいっぱいまで人を雇っているということであり、新しく人を一人やとってもこれ以上の利益は得られない。だから、いくらこんな税控除があっても意味がないわけだ。


これがあくまで基本の考えだろう。こう考えただけでこの政策は意味がない。頭の中が社会主義だからこういう当たり前の発想がまったくないんだろう。


それは理屈だという人もいるかもしれないけど、なかなか収益が上がらない時期には人一人雇用するのに非常に慎重な判断がされるというビジネスの現実にもこれは当てはまる。


②非正規社員にもこの雇用促進税制は当てはめられるらしく、その条件は週20時間以上の労働とか。


この条件が雇用促進税制が適用される最低限の給与水準とすると・・・

社員に対する人件費は20時間/週×時給800円×4(単純化のために4にした)=6.4万円/月となり、これが12か月分とすると、約78万円以上の給与を払うべき人を雇ったときにこの雇用促進税制に基づく税額控除が受けられるわけだ。


そうすると、もし人をムダに(=追加人員の雇用が会社の利益につながらなくても)雇って税額控除を受けようとするためには年に78万を超える控除をもらえないとだめということになる。このたった20万円という税額控除はやはり企業に雇用を増やそうというインセンティブにはならない。


③ある企業が人を雇うかどうか迷っているパターンを考える。この場合はある一定のパターンに関して、この税控除が有効に機能する可能性がある。法人税は面倒なので30%とする。市場金利を(面倒なので)1%とする。


もろもろの経費をいれて人一人を1000万円で雇うかどうかという投資判断に企業が直面しているとする。


この場合、企業が投資をするためには、市場金利を上回るリターンが当然、必要となる。

すなわち手取りベースで1007万円以上のリターンが人一人を雇うことで得られるならばこの企業は雇用を一人増やすことになる。(預金金利=市場金利で運用した場合にもその運用益に法人税30%は課税されるから)


パターンa)この投資のリターンが2%の場合、企業のリターンは税引き後で1014万円であり、この税制が存在しなくてももともと企業は投資を実行している。(①で考えたパターンにはてはまる)


パターンb)この投資のリターンが0.9%の場合。企業のリターンは税引き前で1009万円となる。

もし、雇用促進税制がない場合には30%の税金が引かれるので手取りベースのリターンは1006.3万円となり、市場金利での運用のほうが有利となる。

雇用促進税制が存在すればリターンは税引き前のままの1009万円となりこの企業は新たに一人を雇い入れる可能性がある。(もうちょっと細かい条件もあるが。。。)


すなわち、上記の前提の場合は企業のある人を雇用することへの投資リターンが0.7%より高く1%以下の場合には本来は行われないはずの企業による雇用がこの税制度の存在によって行われるということになる。


という風に非常に限定されたパターンでしか残念ながらこの企業促進税制は効果を発揮しない。しかも、当然ながら、人一人を雇えば容易に解雇させることはできない。しかもこの税制は3年限定らしい。そう考えるならば、企業の雇用がこの税制によって促進される可能性はますます限定されるんじゃないだろうか?手前で人やとっても一人前にするのに数年かかるっていうのがふつうの考えだろうから、3年なんてのは期間限定がすぎるだろう。


残念ながら、このように簡単な分析をしただけで、この税制はほとんど実効性を持たないことがわかる。ま、菅直人の自己満足のためなんだろうけど・・・・。こんな政策はさっさとやめてしまったほうがいいだろう。


それよりも雇用のミスマッチを是正するような政策をやるほうがよっぽどか有用だと思うんだけどね。


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※リンクを貼った記事が消えていたので産経新聞の記事にリンク先を変更しました(2011/1/7)