シーナさんは目論見書を完全読破できるか!? | 「ガソリン入れたか?」

シーナさんは目論見書を完全読破できるか!?

作家の椎名誠さんが昔、
週刊文春の完全読破に成功したことがあります。
表紙の誌名から目次や広告はもちろん、
裏表紙の「第三種郵便物認可」などまで全部で400ページ以上。
あまりにもくだらなくて斬新な企画だったので、よく覚えています。

そんなシーナさんでも、投資信託の目論見書(投資信託説明書)の
完全読破は無理でしょう。100ページくらいの冊子なんですけどね。
それだけ、目論見書には膨大で無味乾燥な専門用語が並び、
一般の人が楽しくなる要素はほとんどないということです。

投資信託の目論見書には2種類あります。
ひとつは交付目論見書。
投資家に必ず交付しなければならない投信の説明書のことで、
運用会社が作成して販売会社が交付するものです。
もうひとつが請求目論見書で、
投資家から請求があった場合に交付するもの。
こちらも運用会社が作成して、
請求があった場合は直ちに販売会社が交付します。

その目論見書が今年7月から改定されました。
とくに交付目論見書は、従来に比べてとてもシンプルになり、
工夫を凝らした内容・表現になっています。
7月から1年かけて、すべての投資信託の目論見書が
改訂版に順次、差し替えられていく予定。
この改定目論見書がぼちぼち、
金融機関の店頭やネット証券のウェブサイトなどで、
閲覧できるようになってきました。

考えてみれば、投信の目論見書はかわいそうな書物です。
読者である投資家は、読まないで済むならできれば読みたくない。
発行者の運用会社も、出さないで済むならできればつくりたくない。
誰にも愛されていないのです。
誤解を恐れずいえば、
金融商品取引法だけが読者と発行者をつなげている。

わかりやすい目論見書をつくるためには、
「誰も本当は読みたくない=メッセージは届きにくい」
ということを前提に考えた方がよさそうです。
具体的には、1ページに収める情報を少なくして
できる限り「白い誌面」にすることを考える。
(誌面が白くないと、届けたいメッセージが埋没していまいます)
“副読本”である販売用資料も、
総ページ数を先に決めるのではなくて、
1ページあたりの情報量を決めてから総ページ数を調整していく。

言うのは易し。注釈や免責事項が多くて本当に難しいです。

投資の世界では、収益の8割は資産配分
(アセットアロケーション)で決まるといわれています。
投資銘柄やタイミングなどの細かな戦術よりも、
どの資産にどのくらいの割合で投資するかという
大きな戦略の方が重要だということです。
わかりやすい目論見書のつくり方も同じかもしれません。

制作サイドとしては、タイトルや見出しの表現、
アイコンや図表のデザインなどにこだわってみたいですが、
効果はあまりないような気がします。
戦術よりも戦略。
表現手法よりも誌面の機能とバランス。
どの情報を、全体のどのくらいの割合で、
いかにゆったり見せることができるか。
ディレクターの腕の見せ所かもしれません。

エンジンと一緒に、
目論見書や販売用資料をつくってみませんか。