現在第七回 永瀬清子現代詩賞 作品募集中です。
詩を書く喜びを、一緒に表現してみませんか?

 


 

 

「花火」 【第六回永瀬清子現代詩賞 『いつかだれかにわたしの思いを』掲載作品】



どこからか 花火の音

私は湯船の中で 記憶に花を咲かせる

 

茎をまっすぐ伸ばした

大輪の花

 

伸びては 咲き

咲いては 夏を彩る

 

ゆっくりあがる音が

いくつか続くと

リズムが変わり 連続して弾ける

 

小さく短く咲き乱れ

急ぎ夜空に散っていく

 

やがて

静けさが藍色の幕を引き

人々のため息が

星の瞬(またた)きに変わるだろう

 

想像に揺らぎを重ね

久しぶりに訪ねた母の家を

足早に去った 昼間の私を思い返す

 

肩までゆったりと湯に浸かり直し

母のおなかで聞く花火は

こんな感じかと 目をつむる

 

見送る母の顔が

私の空に 

何度も 

咲いては消えた