少しお酒が入ると、マユコさんも緊張している様子はなかった。

母も普段通りの母だった。

父は無口な人だけど、母も驚くほど喋っていた。

 

すると、お酒の勢いの乗せられたのか、僕がお嫁さんを連れてきたのが嬉しかったのか、昔話を始めた。

母から聞いたことはあったけど、父は昔、とても苦労したらしい。

父の父は職人さんだったけど、けがをして働けなくなって、授業料が払えずに父は高校を中退したという。

そしてすぐに働きに出たけど、当時は父を憎んでいたらしい。

野球部で4番でエースだったので、配達の仕事をしていると、野球の練習をしているグラウンドの横を通ると涙が出てきた、と。

 

当時のことを思い出したのか、父は泣いていた。

恥ずかしそうに、泣き笑いになり、「この歳になると涙もろくてね。。。」なんて言いながら。

相当悔しかったのだろう。

 

母はマユコさんに申し訳なさそうに謝っていたけど、マユコさんは父の聞き役になってくれていた。

父が泣いているところを始めてみたけど、僕が独身のままならおそらく話さなかっただろうと思いながら聞いていた。

 

3時間ほど経ち、母もお酒を飲んでいたので、タクシーで駅まで行くことにした。

すると、玄関で父がマユコさんに敬語で言った。

 

「こいつは私に似て、不器用ですが真面目だけが取り柄の男です。あなたにはもっともっと相応しい方がいるはずなのに、ウチの息子を選んでくれてありがとうございます。こいつの人間性は私が保証します。ぜひ、末永く宜しくお願いします。」

 

初めて父が頼もしく見えた。

 

マユコさんは「いえいえ、こんな素敵な方とご家族の方に出会えて嬉しいです」と言ってくれた。

 

母が「またいつでも遊びに来てね」と言って見送ってくれた。

 

≪続く≫