第9回:みんな電力 −ワクワクの仕掛け人・前編(関東・総合) | 全国ご当地エネルギーリポート!

全国ご当地エネルギーリポート!

-エネ経会議・特派員:ノンフィクションライター高橋真樹が行くー


 ワクワクするような自然エネルギーの取り組みを伝える「高橋真樹が行く 全国ご当地電力レポート!」。今回は、世田谷をベースに斬新なアイデアを次々と発信し続ける「みんな電力株式会社」にインタビューしてきました。

 「エネ経」の会員さんでもあるみんな電力は、10月19日に行われた「世田谷から始まる未来のエネルギー生活」というイベントの仕掛け人でもあります。タレントの小森純さんに登場してもらうなど、難しい話になりがちなエネルギーの話を、一般の人にわかりやすく伝える工夫が好評でした。

$全国ご当地電力リポート!
「世田谷から始まる未来のエネルギー生活」第2部は学園形式でクイズを出題

 エネルギーのことを、もっと身近に感じてもらおうと幅広い活動をしている「みんな電力」。社長の大石英司さんから、イベントの様子や活動をはじめたきっかけなど伺ってきました。2回に分けてお届けします!

❒みんながエアコンを掃除したら、原発がいらなくなる

$全国ご当地電力リポート!
みんな電力の大石英司さん(新商品「solamaki」とともに)

高橋:「ソーシャル・エネルギー・カンパニー」として幅広い活動をしているみんな電力ですが、そもそも会社をつくられたきっかけは何だったのでしょうか?

大石:「こんなことをやったら面白いんじゃないか」と思いついたのは、3・11の震災前でした。街で見かけた女性が、アクセサリーとしてソーラーライトをつけていたんです。それを見て、「電気って、誰にでも作れるんだ」と感じました。こんな風に、誰にでもエネルギーが作れる社会になれば面白いなと。それで、前の会社にいたとき個人で小さい発電グッズを開発するプロジェクトをはじめたんです。当初、会社の仲間たちの反応はさっぱりでしたが、震災が起きて停電もあって、電気に対する意識が変わったのでしょう。「面白いね」と言ってくれる人が増えてきたんです。それで、この取り組みは一生かけてやる価値があると感じたので、思い切って会社をやめて、みんなが電力をつくれる社会を作るために「みんな電力」を設立しました。

高橋:思い切りましたね!

大石:そうですね。でも、これまでやってきたことが役に立てられる気もしていました。私が以前務めていた大手印刷会社では、電子出版事業を手がけていました。そこでは、日の当たらなかった眠れる才能を発掘する努力をしてきたのですが、そういう意味で、「みんな電力」でやろうとしていることも共通しています。今はあまり注目されていない技術などが世の中に広がることで、エネルギーのあり方も変わっていくし、イノベーションが進んでいくという可能性を感じています。いずれみんながエネルギーをつくる社会にして、国を動かしていければいいですね。

高橋:3・11で意識が変わった人が多いとおっしゃいましたが、それから3年間「みんな電力」をやってきて、人々の意識はどう変化してきたでしょうか?

大石:震災の時は確かに、節電しようという意識が高まりました。でも、最近はそれが低下しているのは確かです。正確に言えば、エネルギー問題に貢献したいと考えている人は減っているわけではありませんが、具体的に行動している人が減っている。実際に、去年の電力使用量も上がっています。一般の人は何をやっていいかわからないのだと思います。

高橋:そんな中で、具体的な省エネ法を広めたいという活動もしていますね。

大石:はい。省エネ、節電について言えば、まだまだものすごい余地があるんです。例えばエアコンのフィルターの掃除をすると、年間で1万5千円も家計の得になります。電力量に置き換えると、日本中の4000万世帯が全部エアコンのフィルターを掃除するだけで、原発2基分の電気がいらなくなるんです。これを知るだけで、「掃除してみようか」という気になりませんか?(笑)ほかにもトイレのウォシュレットの蓋を閉めたらいくらの節約とか、いろいろデータを紹介していますが、みんなでやったらこんなすごいことになるんだというのを伝えていきたいですね。誰にでも簡単にできるということが大事だと思います。

❒新しい試み、「世田谷から始まる未来のエネルギー生活」

高橋:先日のイベントについて伺います。こちらは2部制で、1部と2部では違った雰囲気で行われました。

大石:はい。一部にはエネ経会議の鈴木悌介さんをはじめ、「しずおか未来エネルギー」の服部乃利子さんら、ご当地電力で積極的に行動している方たちにお話しいただきました。世田谷は電力の大消費地ですから、エネルギーを生産している地域とどのようにつながっていけるか探ろうというコンセプトでやったんです。

$全国ご当地電力リポート!
「世田谷から始まる未来のエネルギー生活」第1部は全国のご当地電力が登場!

 一方、2部では小森純さんをはじめ、タレントの方やピンクパンサー、くちぱっちなどのキャラクターにも出てもらって、クイズ形式で進行するスタイルにしました。狙いとしては、もっとライトな層の人たちにエネルギーに興味を持ってもらうきっかけにできたらいいかなと。

$全国ご当地電力リポート!
みんな電力の商品「手のひら発電、空野めぐみ」を紹介するエネドルの永峯恵さんと、ピンクパンサー

高橋:斬新な企画ですね、ぼくはこういう雰囲気は大好きですが、参加された方の反応はどうでした?

大石:参加者では1部のご当地電力の話に興味がある方が多く、地域でエネルギー事業を立ち上げたいという人の反応は良かったですね。ただ、2部で想定していたような子連れの家族であったり、エネルギーのことを考えたこともないというような人たちには、まだまだ届かなかったのかなと。小森純さんや出演者のモデルの方のブログなどでも呼びかけていただいたのですが、当日の来訪者は350名ほどで、私たちが想定していたほどは伸びませんでした。次回はもっと頑張ります!

高橋:エネルギーのイベントで350名でも結構多いと思いますが、野心的ですね(笑)

大石:一般の方に広げていくのが私たちの仕事ですから。今回のイベントで、これはいけるかもしれないと思ったのは、戦隊モノのヒーローをやっていたイケメン俳優の片岡信和さんにも出てもらったのですが、ファンの若い女性がけっこう来ていたことでした。

高橋:じゃあこれからは、女の子を呼べるイケメン狙いですね(笑)

大石:それでエネルギーのことをちょっとでも考えてもらうきっかけになればと思っています。収穫は他にもあって、クイズを通して、小森さんがけっこう良いことを言ってくれたんです。原発と自然エネルギーの電気の話を受けて、「電力を目先の値段ではなくて、安全性で選べたらいいというのがわかった」と。そういったコメントをイベントの後、ブログなどで発信してくれたので、大事なことはちゃんと伝わるんだと感じて嬉しかったですね。エネルギーの話はどうしても専門的になりがちですが、普通のママたちが納得してくれるように、お金に換算して伝える努力とか、そういうことも大事だなと思いました。

 小森さんには、1部にも出演していただきました。有識者が集まって話をされたのですが、小森さんがわからないところを突っ込んで聞いてくれるので、わかりやすくなったと思います。

$全国ご当地電力リポート!
クイズに参加したタレントの小森純さん(左)と片岡信和さん(右から2人目)


❒世田谷新電力研究会って?

高橋:「みんな電力」は、このイベントを主催している「世田谷新電力研究会」の事務局ということですが、どんなグループなのでしょうか?

大石:世田谷のいろいろな団体が参加しているグループで、世田谷区民が主体で新電力会社をつくろうという夢を持って勉強会などを行っています。いまは任意団体ですが、年明けには株式会社化しようという話も出ています。

高橋:これも野心的なプランですね!どんな人たちが関わっているのでしょうか?

大石:自然エネルギーなどに熱心な世田谷区長の保坂展人さんや、「らでぃっしゅぼーや」を立ちあげた徳江倫明さんに呼びかけてもらって、いろいろな生協のグループや地域の事業者さんが参加しています。生協は食の共同購入をしているので、電力も共同購入しようという発想がなじみやすいのだと思いますね。

$全国ご当地電力リポート!
保坂展人世田谷区長(右)とお笑い芸人の天津・木村さん(左)

高橋:地域の電力会社づくりを進めていくにあたっての課題は、どんなところにあるでしょうか?

大石:まずは地域のPPS(特定規模電気事業者)として、発電した電力を小売する体制を作りたいと思っていて、資金面などの準備をしています。ただ、あまり例のない取り組みなので、事業化した場合には、誰が中心になってリスクをかけて取り組んでくのがまだ決まっていないという課題があります。世田谷新電力研究会が主催したイベントは今回で3回目になりますが、こうした取り組みを元に、幅広いネットワークを築いて、課題をクリアしていきたいと思っています。

(後編につづく!)

次回は、イベントでもMCをつとめたエネドルの上田マリノさんのインタビューや、「みんな電力」がめざすものについてお伝えします。