湘南藤沢徳洲会病院 内視鏡内科の医師、永田充です。

 

2026年5月8日(金)〜10日(日)にパシフィコ横浜で開催された、第111回日本消化器内視鏡学会総会に参加して来ました。

会場のパシフィコ横浜は、全国から集まった医師たちの熱気に包まれていました。

 

私は、大腸ESDのハンズオンセミナーで、インストラクターを務めさせていただきました。

 

ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)とは、早期のがんや大きなポリープなどを、内視鏡を使って切除する治療です。

外科手術と比べて体への負担を少なくできる可能性がありますが、非常に繊細な技術を必要とする治療でもあります。

 

今回のハンズオンセミナーでは、動物の腸管を用いたトレーニングモデルを使い、参加された先生方が実際に内視鏡を操作しながらESDの手技を学ぶ形式で行われました。

気体の中で行われる通常のESDに加えて、

私が取り組んでいるUnderwater ESDについても少し紹介しました。

 

今回使用した最新のトレーニングモデルは非常に精巧で、Underwater ESDにも対応しており、より実際の治療に近い感覚で練習できるようになっていました。こうしたトレーニング環境の進化も、安全な治療技術の普及につながっていくものと感じました。

 

ESDのような高度な内視鏡治療を安全に行うためには、実際の治療に入る前から、トレーニングモデルを用いて基本操作を学ぶことが大切です。
その後、臨床の現場では指導医のもとで段階的に経験を積み、少しずつ治療技術を身につけていきます。

 

今回、参加された先生方はいずれも非常に熱心で、私自身にとっても大変良い経験となりました。

「教える」という経験は、自分自身の技術を客観的に見つめ直す機会でもあります。

今回得た気づきや、全国の先生方との交流で得た知見を、日々の診療にしっかりと還元していきたいと思います。

 

 

👉ESDに関して詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。

 

 

湘南藤沢徳洲会病院 内視鏡内科の医師、永田充です。

 

ピロリ菌というと、

  •  胃がんの原因
  •  除菌した方がよい菌

というイメージを持っている方が多いと思います。

 

実際、現在は胃がん予防の観点から、
ピロリ菌の除菌が広く行われています。

 

一方で、

「ピロリ菌は食道がんを減らしている可能性がある」

という、少し意外な研究結果も報告されています。

 

今回は、
ピロリ菌と「食道がん」の関係について、
できるだけ分かりやすく整理します。

 

 

食道がんには2つのタイプがあります

実は、「食道がん」と一言で言っても、
主に

  1. 食道腺がん…欧米で増えているタイプ
  2. 食道扁平上皮がん…日本で多いタイプ

の2つのタイプがあります。

 

この2つは、
発生の仕組みや危険因子が少し異なります。

 

ピロリ菌は「食道腺がん」を減らす可能性?

近年の複数の研究では、

ピロリ菌感染者では、食道腺がん(欧米で増えているタイプ)が少ない傾向

が報告されています。

 

理由として考えられているのは、

ピロリ菌によって胃酸の分泌が減る

ことです。

 

胃酸が減ると、

↓

胃酸の逆流(逆流性食道炎)が減る
↓

バレット食道(胃酸の逆流で食道の粘膜が変化した状態)が減る

↓
食道腺がんのリスクが下がる可能性がある

 

と考えられています。

 

では、「食道扁平上皮がん」は?

日本で多いタイプの「食道扁平上皮がん」については、

 

多くの研究で、ピロリ菌とのはっきりした関連は認められませんでした。

 

重要な注意点

ここで誤解してはいけないのは、

 

「ピロリ菌感染者では、食道腺がん(欧米で増えているタイプ)が少ない傾向」

→「ピロリ菌は除菌しない方がいい」

 

という意味ではないことです。

 

ピロリ菌は、

  • 胃がん
  • 胃潰瘍
  • 十二指腸潰瘍
  • 胃炎

などと強く関連しています。

 

現在は、

 

胃がん予防の観点からピロリ菌除菌のメリットは大きい

 

と考えられています。

 

また、今回紹介した研究の多くは、
欧米のデータを含んでいます。

 

日本と欧米では、 食道がんのタイプ自体が異なる

という背景があります。

 

そのため、

研究結果をそのまま日本人に当てはめる際には注意が必要です。

 

まとめ

・ピロリ菌は食道腺がん(欧米で増えているタイプ)を減らす可能性が示唆されている


・一方、食道扁平上皮がん(日本で多いタイプ)との関係ははっきりしない
 

・ただし、ピロリ菌は胃がんの重要な原因であり、除菌のメリットは大きい

 

ピロリ菌と食道がんの関係は、
まだ完全には解明されていません。

 

今後さらに研究が進むことで、
より詳しいことが分かってくるかもしれませんね。

 

参考文献:
Liu X, et al. J Transl Gastroenterol. 2023

 

※この記事は、病気や検査について一般的な情報を分かりやすくお伝えする目的で書いています。症状や検査の必要性は、年齢や体質、既往歴などによって異なりますので、気になる症状がある場合は、早めに医療機関へご相談ください。

 

この記事を書いた人

永田充(消化器内視鏡専門医/湘南藤沢徳洲会病院 内視鏡内科 部長)  

▶ 詳しいプロフィール・実績はこちら  

 

▶内視鏡治療や研究内容(Underwater ESDなど)については、専門家向けにnoteでも発信しています。

 

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「ピロリ菌を除菌すると、食道がんが増えるのでは?」と思った方は以下の記事もご参照ください。

 

 


 ピロリ菌除菌が胃がん予防において重要なことを解説した記事です。

 

 

 

湘南藤沢徳洲会病院 内視鏡内科の医師、永田充です。

 

「ピロリ菌は除菌した方がいい」

 

そう言われる一方で、

 

「除菌すると、逆に食道がんが増えるのでは?」

 

そんな話を聞いたことがある方もいるかもしれません。

 

実際に不安に感じている方も多いポイントです。

 

この点について、長年議論がありましたが、

実は大規模なデータで一つの答えが示されています。

 

 

ピロリ菌の除菌で食道がんが増える?

食道がんの種類の一つに、食道腺がんがあります。

 

このタイプの食道がんは胃酸の逆流が原因の一つとされていますが

 

ピロリ菌に感染すると

→胃の粘膜が萎縮

→胃酸の分泌が低下

します。

 

すると、

 

胃酸の逆流が減る

→食道腺がんのリスクが下がる可能性がある

 

と考えられてきました。

 

そのため、

 

「除菌すると胃酸の逆流が元に戻って、逆に食道腺がんのリスクが上がるのでは?」

 

という懸念があったのです。

 

結論:除菌しても、食道がんは増えない

北欧5カ国で行われた約66万人の大規模研究では、

ピロリ菌を除菌しても

 

・食道腺がんの発生は増えず、長期的にはむしろ減少傾向

 

・食道扁平上皮がんについても、発症率は一般集団とほぼ同じ

 

論文: Wiklund AK, et al. Gastroenterology. 2024

 

という結果でした。

 

注意しておきたい重要ポイント

一方で、

 

  • 胃酸の逆流(胃食道逆流症)がある方
  • 胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬)を使用している方

 

では、食道腺がんのリスクは高い傾向がありました。

 

これは以前から知られているリスク因子であり、

 

「ピロリ菌の除菌そのものが原因」というわけではない

 

と考えられます。

 

なぜリスクが上がらなかったのか?

理由としては、

 

  • 除菌後も胃酸分泌が完全には回復しない可能性
  • 生活習慣の改善(禁煙・食事など)

 

などが影響している可能性が指摘されています。

 

日本人への当てはめについて

今回の研究は北欧のデータであり、

 

日本人とは背景(体質・食習慣など)が異なります

 

そのため、

 

この結果をそのまま日本人に当てはめる際には注意が必要

 

です。

 

ただし、

 

少なくとも「除菌で食道がんが増える」という強い懸念は

現時点では支持されていない

 

と考えてよいでしょう。

 

まとめ

今回紹介した研究の結果で言えることは

 

  • ピロリ菌除菌で食道腺がんは増えない
  • 長期的にはむしろ低下傾向
  • リスクに影響するのは胃酸の逆流など他の要因

 

ということです。

 

ピロリ菌は胃がんの主要因となるため、

 

「除菌せず放置するリスク」が大きい感染症です。

 

不安な情報に振り回されすぎず、正しい知識で判断することが大切です。

 

※この記事は、病気や検査について一般的な情報を分かりやすくお伝えする目的で書いています。症状や検査の必要性は、年齢や体質、既往歴などによって異なりますので、気になる症状がある場合は、早めに医療機関へご相談ください。

 

この記事を書いた人  

永田充(消化器内視鏡専門医/湘南藤沢徳洲会病院 内視鏡内科 部長)  

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▶内視鏡治療や研究内容(Underwater ESDなど)については、専門家向けにnoteでも発信しています。

 

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ピロリ菌の感染と食道がんの関係について解説した記事です。
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湘南藤沢徳洲会病院 内視鏡内科の医師、永田充です。

 

私は普段、食道がん・胃がん・大腸がんに対する内視鏡治療を行っており、
特にESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)を専門としています。

ESDは、早期のがんをお腹を切らずに治療できる方法の一つです。


従来は気体の中で行われてきましたが、近年では浸水下で行われる
「Underwater ESD(アンダーウォーターESD)」という方法が注目されています。

 


Figures adapted from: Nagata M. Clinical Endoscopy. 2026.
Licensed under CC BY-NC 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0/)

私はこの方法の開発初期から関わってきましたが、先日、消化器内視鏡の国際誌「Clinical Endoscopy」に、
Underwater ESDに関する総説を寄稿する機会をいただきました。

 

※総説とは、特定のテーマにおける既存の文献を網羅的に整理し、その分野の現状、研究動向、課題、展望を解説する論文のことです。

 

内視鏡治療は年々進歩していますが、
実際の現場では、すべてが順調に進む症例ばかりではありません。
 

病変の場所や状態によっては、従来の方法では難しいケースもあります。

Underwater ESDは、そうした場面で治療をスムーズに進めるための一つの工夫です。
 

状況によっては視野が良くなり、より安全に処置できる可能性があります。

もちろん、新しい方法には課題もありますが、
少しずつ対策が進み、改良が重ねられています。
今後さらに発展していく可能性を感じています。

また、従来の方法と新しい方法をうまく使い分けることも重要です。
それぞれの特徴を踏まえ、その方にとって最適な方法を選択することを大切にしています。

今回の総説では、これまでの経験や工夫も含めて、包括的にまとめました。

患者さん一人ひとりの状況に合わせて、
より安全で確実な治療を提供できるよう、これからも取り組んでいきたいと思います。

 

なお、今回の総説にご興味のある方は以下のリンクから無料でご覧いただけます。

https://doi.org/10.5946/ce.2025.330

 

この記事を書いた人  

永田充(消化器内視鏡専門医/湘南藤沢徳洲会病院 内視鏡内科 部長)  

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湘南藤沢徳洲会病院 内視鏡内科の医師、永田充です。

 

「胃カメラもバリウムもなしで胃の検査できます」と言われたら、どう思いますか?

 

そんな新しい検査法が報告されました。

 

ニュースはこちら👇

 

名古屋市立大学医学部附属みどり市民病院と金沢大学の研究グループが開発したのは、

 

 

胃の内部を鮮明かつ立体的に可視化する“バーチャル内視鏡検査”

 

です。

 

 

「飲む」から「撮る」へ

従来の胃の検査といえば、

 

  • 胃カメラ(内視鏡)
  • バリウム検査

 

のどちらかが一般的でした。

 

ただ、どちらも

 

  • つらい
  • 苦しい
  • 苦手

 

という声が多いのも事実です。

 

今回の検査では、

 

  1. 発泡剤を飲んで胃を膨らませる
  2. CTで撮影する
  3. 画像処理
  4. 立体画像生成
  5. VRゴーグルで観察

 

※VR(Virtual Reality:バーチャルリアリティ/仮想現実)

 

この一連の流れにより、

 

あたかも胃の内部を直接のぞき込んでいるかのような3D画像を

 

VRで観察することができるとされています。

 

検査の考え方が「飲む」から「撮る」へ変わる可能性

 

という点で、とても興味深い技術です。

 

バリウム検査の代わりになる可能性

この検査が特に注目される理由の一つは、

 

バリウム検査の代替になり得る点

 

です。

 

バリウム検査には、

 

  • 誤嚥のリスク
  • 検査後の便秘
  • 体位変換の負担

 

といった課題があります。

 

一方、この新しい方法では、

 

  • 飲むのは発泡剤のみでOK
  • 身体的な負担が比較的少ない

 

といったメリットがあり、

 

人間ドックや検診でのハードルを下げる可能性があります。

 

他の臓器も一緒に見られる

今回の報告によると、CTを使うため、

 

胃だけでなく、肝臓・膵臓なども同時に評価できる

 

というメリットもあるようです。

 

一度の検査で広い範囲をチェックできるのは、

 

従来の検査にはない強みです。

 

被ばくは?実はバリウムより低い可能性も

CTと聞くと被ばくが気になる方も多いと思いますが、

 

今回の報告では、

 

不要なX線をカットすることにより、

 

従来の胃X線検査(バリウム)より被ばくの面で安全性が高い

 

とされています。

 

この点も重要なポイントです。

 

胃カメラは不要になる?

ここは少し冷静に見ておく必要があります。

 

この検査は

 

「見る検査」

 

です。

 

一方、胃カメラは

 

「見る+必要ならその場で組織を取る(生検)」

 

ことができます。

 

そのため現時点では、

 

  • 異常なし → この検査で完結
  • 異常あり → 胃カメラで精密検査

 

という流れになると考えられます。

 

まとめ:新しい選択肢として期待

今回の技術は、

 

胃カメラ、バリウムが苦手な方にとって大きな選択肢になり得る検査

 

です。

 

一方で、

 

確定診断や精密検査では、やはり胃カメラが重要

 

という点は変わりません。

 

どの検査にも役割があります。

 

大切なのは「どれが優れているか」ではなく、 

 

「どの場面で使うか」です。

 

今回のような技術は、

 

“検査がつらいから受けない”を減らす一歩

 

になるかもしれません。

 

今後、どのように実用化されていくのか、引き続き注目したいと思います。

 

 ※この記事は、病気や検査について一般的な情報を分かりやすくお伝えする目的で書いています。症状や検査の必要性は、年齢や体質、既往歴などによって異なりますので、気になる症状がある場合は、早めに医療機関へご相談ください。

 

この記事を書いた人  

永田充(消化器内視鏡専門医/湘南藤沢徳洲会病院 内視鏡内科 部長)  
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▶内視鏡治療や研究内容(Underwater ESDなど)については、専門家向けにnoteでも発信しています。

 

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