大腸憩室炎は、これまで抗菌薬で治療されることが多い病気でした。
しかし、2026年に改訂された大腸憩室症ガイドラインでは、
膿瘍や穿孔を伴わない大腸憩室炎に対して、抗菌薬を投与しないことが提案されました。
そう聞くと、
「憩室炎なのに、抗菌薬を使わないの?」
と感じる方も多いと思います。
今回の記事では、なぜ憩室炎で抗菌薬を使わない場合があるのか、患者さん向けに分かりやすく解説します。
大腸憩室炎とは?
大腸憩室とは、大腸の壁の一部が袋状に外側へふくらんだものです(内視鏡で大腸の内側から観察すると、穴のように見えます)。
そこに炎症が起こると「大腸憩室炎」と呼ばれます。
- 腹痛・発熱などの症状
- 血液検査での炎症反応の上昇
などをきっかけに診断されることがあります。
今回変わったポイント:抗菌薬使用について
今回の大腸憩室症ガイドライン改訂で特に注目されているのは、
膿瘍や穿孔を伴わない大腸憩室炎では、抗菌薬を投与しないことが提案された
という点です。
※膿瘍:うみが溜まった状態、穿孔:腸に穴があくこと
※ただし、状態によっては抗菌薬投与を考慮します。
「炎症があるのに、抗菌薬を使わなくていいの?」
と感じる方もいるかもしれません。
以前、憩室炎は「細菌感染による病気」と考えられ、抗菌薬が使われることが一般的でした。
しかし、近年は憩室炎の起こり方について研究が進み、単純な細菌感染だけでは説明できないことが分かってきました。
腸内細菌のバランスの変化などが関係している可能性が指摘されています。
そのため、必ずしも「細菌感染症と同じように抗菌薬を使うべき状態」とは限らない、という考え方になってきています。
抗菌薬を使わない=放置ではありません
ここで大切なのは、
抗菌薬を使わないことがある=何もしない、という意味ではない
ということです。
軽症の憩室炎では、食事内容の調整、安静、症状の経過観察などを行いながら、慎重に様子をみることがあります。
特に、
- 膿瘍や穿孔がない
- 水分や食事がある程度とれる
- 全身状態が安定している
- 重症化しやすい背景がない
といった場合には、抗菌薬を使わずに外来で経過をみることが選択肢になる場合があります。
つまり、「薬を出さない」のではなく、
重症度や全身状態を見ながら必要な治療を判断する
という考え方です。
ただし、抗菌薬が必要な場合もあります
ここはとても大切です。
今回の話は、あくまで
膿瘍や穿孔を伴わない大腸憩室炎
についての話です。
すべての憩室炎で抗菌薬が不要という意味ではありません。
たとえば、
- 膿瘍がある
- 穿孔が疑われる
- 腹膜炎が疑われる
- 敗血症が疑われる
- 免疫を抑える薬を使っている
- 妊娠中である
- 全身状態が悪い
といった場合には、抗菌薬や入院治療が必要になることがあります。
また、最初は軽症に見えても、途中で悪化することもあります。
こんな症状があるときは注意
自宅で経過を見る場合でも、次のような症状があるときは注意が必要です。
- 腹痛が強くなる
- 発熱が続く、または悪化する
- 寒気や震えがある
- ぐったりしている
- 食事や水分がとれない
- 血圧が下がる、意識がぼんやりする
- 症状が改善せず長引く
このような場合は、膿瘍や穿孔などの合併症が隠れている可能性もあります。
自己判断で様子を見すぎず、早めに医療機関へ相談してください。
まとめ
大腸憩室炎の治療は、以前のように
「憩室炎だから抗菌薬」
と一律に考える時代から、重症度や全身状態を見ながら判断する時代に変わってきています。
一方で、強い腹痛、発熱の持続、寒気、食事がとれない、ぐったりするなどの症状がある場合は、注意が必要です。
膿瘍や穿孔などの合併症が隠れていることがあり、抗菌薬や入院治療が必要になる場合もあります。
自己判断で様子を見すぎず、早めに医療機関を受診してください。
※この記事は、病気や検査について一般的な情報を分かりやすくお伝えする目的で書いています。症状や検査の必要性は、年齢や体質、既往歴などによって異なりますので、気になる症状がある場合は、早めに医療機関へご相談ください。
この記事を書いた人
永田充(消化器内視鏡専門医/湘南藤沢徳洲会病院 内視鏡内科 部長)
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▶内視鏡治療や研究内容(Underwater ESDなど)については、専門家向けにnoteでも発信しています。



