湘南藤沢徳洲会病院 内視鏡内科の医師、永田充です。

 

「大腸カメラを受けずに、大腸がんを調べられたらいいのに」

 

そう思う方は多いかもしれません。

 

大腸カメラは、大腸の中を直接観察できる大切な検査です。

 

一方で、下剤を飲む必要があったり、検査に不安を感じたりする方も少なくありません。

 

最近、便に含まれる腸内細菌の情報を使って、大腸がんを見つけるという新しい研究が報告されました。

 

今回は、この新しい便検査の可能性と、現時点での注意点について、できるだけ分かりやすくまとめます。

 

 

便に含まれる「腸内細菌の情報」を調べる検査

私たちの腸の中には、たくさんの細菌がすんでいます。

いわゆる「腸内細菌」です。

 

腸内細菌は、食事や生活習慣、体の状態などによって変化します。

そして近年、腸内細菌とさまざまな病気との関係が注目されています。

 

今回報告された研究では、便に含まれる腸内細菌の情報をかなり細かく調べ、コンピューターでそのパターンを解析することで、大腸がんに関連する特徴を見つけようとしています。

 

簡単にいうと、

 

便の中にある腸内細菌のパターンから、大腸がんのサインを探す検査

 

というイメージです。

「大腸がんの90%を検出」は有望な結果

この研究では、便の情報を使って、大腸がん症例の約90%を検出できたと報告されています。

 

この数字だけを見ると、かなり有望な結果です。

 

便を提出するだけで大腸がんの可能性が分かるのであれば、検査を受けるハードルは大きく下がるかもしれません。

 

大腸がんは、早い段階で見つかれば治療しやすい病気です。

その意味でも、より受けやすい検査が開発されることには大きな意義があります。

 

「大腸カメラが不要になる」という意味ではありません

今回の研究は興味深いものですが、現時点で、

 

「この便検査があれば、大腸カメラを受けなくてよい」

 

という話ではありません。

 

便検査は、基本的には「大腸がんの可能性がある人を見つける検査」です。

 

一方、大腸カメラは、実際に大腸の中を直接見て、

 

  • がんがあるかどうかを確認する
  • ポリープを見つける
  • 必要に応じて組織を取る
  • 条件が合えばポリープを切除する

 

といったことができます。

 

つまり、便検査で異常が疑われた場合でも、最終的な確認には大腸カメラが必要になることが多いのです。

 

便潜血検査とは何が違うの?

現在、日本の大腸がん検診で広く使われているのは、便潜血検査です。

 

便潜血検査は、便の中に血液が混じっていないかを調べる検査です。

大腸がんやポリープから出血している場合に、陽性になることがあります。

 

一方、今回の新しい便検査は、血液ではなく、便に含まれる腸内細菌の情報を解析します。

 

つまり、

 

  • 便潜血検査:便の中の血液を調べる
  • 新しい便検査:便の中の腸内細菌のパターンを調べる

 

という違いがあります。

 

どちらも便を使う検査ですが、見ているものは異なります。

 

将来的には、こうした検査が組み合わさることで、大腸がんをより見つけやすくなる可能性もあります。

 

まだ「研究段階」の検査

今回の研究は、とても期待できる内容です。

 

ただし、現時点では、すぐに日本の一般診療で使える標準的な検査というわけではありません。

 

また、今後確認が必要な点もあります。

 

たとえば、

 

・早期の大腸がんも十分に見つけられるのか

・大腸ポリープはどこまで検出できるのか

・日本人でも同じような結果になるのか(今回は海外から報告された研究結果)

・検査で陽性になった人を、どのように大腸カメラにつなげるのか

 

といった点です。

 

特に、海外の研究結果をそのまま日本人に当てはめられるとは限りません。

日本で実際に使うには、日本人を含めたデータでの検証も重要になります。

 

大腸がん検診を受けるきっかけになることが大切

 

大腸がん検診で大切なのは、まず検査を受けることです。

 

どれほど良い検査があっても、受けなければ大腸がんを見つけることはできません。

 

便検査は、大腸カメラに比べると体への負担が少なく、受けやすい検査です。

そのため、将来的に精度の高い便検査が普及すれば、検診を受ける人が増える可能性があります。

 

これは、とても大きなメリットです。

 

ただし、便検査で異常を指摘された場合には、そこで終わりにせず、大腸カメラによる精密検査を受けることが大切です。

 

まとめ

 

便に含まれる腸内細菌の情報を解析し、大腸がんを見つける新しい検査の研究が報告されました。

 

大腸がん症例の約90%を検出したという結果は、とても期待できるものです。

 

一方で、現時点ではまだ研究段階の検査であり、すぐに大腸カメラが不要になるわけではありません。

 

大腸がんは、早期発見がとても大切な病気です。

 

便検査も大腸カメラも、それぞれの役割を理解して、うまく活用していきたいですね。

 

※今回参考にしたのは、ScienceDailyに掲載された、ジュネーブ大学の

「腸内細菌を用いた新しい便検査で大腸がんの90%を検出」

という研究紹介記事(Goodbye colonoscopy? New stool test detects 90% of colorectal cancers)です。

 

※この記事は、病気や検査について一般的な情報を分かりやすくお伝えする目的で書いています。症状や検査の必要性は、年齢や体質、既往歴などによって異なりますので、気になる症状がある場合は、早めに医療機関へご相談ください。

 

この記事を書いた人
永田充(消化器内視鏡専門医/湘南藤沢徳洲会病院 内視鏡内科 部長)  
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