毎日一度は顔を会わせる鏡に映った自分。
勿論、鏡なのだから全てが本当の自分とは左右逆。
でも時々ふと考えてしまう。
もし、鏡に映る自分が、外見だけでなく、内面まで逆だったら。
本当の自分が右を選ぶとき、あなたは左を選ぶ。
あなたが捨ててしまいたいものは、本当の自分にとってかけがえのないもの。
本当の自分が耐えがたいほど苦痛に感じることはあなたにとって永久に続いて欲しいと願うもの。
なんて、あれこれ思考を巡らせているうちに、ある提案をしてみたくなった。
僕らを隔てている、この薄っぺらい、数センチにも満たないこの境界をひょいと飛び越えて
一度こちらの世界に来てみてはどうだろうか。
そして、もしあなたが嫌じゃなければ、しばらくの間、僕と入れ替わってみてはもらえないか。
外見は僕にそっくりなのだから、決して気づかれることはないだろう。
僕とは中身がまるで真逆のあなたが明日から「僕」として世に出る。
考えただけでもゾクゾクする。
みんなどんな顔するだろう。
親しい人間はみんな離れていくのかな。
でも僕の大嫌いな人とは意外に分かり合えたりして。
僕が長年決断できなかったことをあなたはいとも簡単にやってみせるだろう。
でもそれは僕なんだ。
しばらくしたらまたバトンタッチしよう。
離れていった親しい人間との関係は僕があとで修復しておくよ。できるかな・・・。
そして、大嫌いだった人との関係はそのまま引き継がせてもらうとしよう。
あなたが下した決断も、僕自身の決断とし最後まで責任もってやり遂げるだろう。
僕はちょっと油断するとガチガチの偏った人間になってしまうから。
だから、もしあなたが折に触れてこちらの世界に来て僕の代わりにバランスを取ってくれるなら、僕は喜んで鏡の世界に行くし、あなたがしばらくこちらの世界にいたいなら、僕はどんだけでも待つことができる気がする。
そっちの世界で真逆のみんなも見てみたいし。
だけど、この悪戯に一通り満足したら、あとは僕らは絶妙のタイミングで入れ替わるのがいいのだと思う。
時には秒単位で。テンポよく。
お互い気をつけていれば間合いも測れるし、どちらか一方に行き過ぎてしまうこともないだろう。
きっとうまくやれるんじゃないかな。
ちゃんと話し合って細かなところを調整しよう。
ちょっと勝手な発想かもしれないけど、そんな風に考えてしまう。
まあ、兎にも角にもまずはこちらの世界に来てもらえないかな。
僕だけじゃ到底かかえきれないものもある。
だから、あなたとはお互いの長所、短所をうまく補完できる関係でありたい。
僕の短所はあなたの長所、あたなの短所は僕の長所。
物事には必ず二面性がある。
100%信じて止まないものは100%信じてはいけないもの。
白いものは実は真っ黒で、真っ黒なものは実は真っ白。
なんて。さすがにそこまで極端なことはないと思うけど、
何となく怖いんだ。
自分のアタマがどんどん何かに安住してゆくのが。
研ぎ澄まされた感性と、ゴムのような柔軟性と、ヤジロベエのようなバランス感覚。
春の陽気のような優しさと、群れを守るライオンのような勇敢さ。
敢えて真逆のあなたと交流することによって、それらを紡ぎだしていきたい。
さあ、こっそり今から始めてみないか?