「秋風が運ぶもの」




ある日ふと、風が冷たくなっていることに気が付いた。


10月に入ってからも真夏日があったりと、なかなか夏が終わらなかった。


そうだ。とっくに秋に入っていたんだ。


最近どんどん季節感が無くなっていく。


昔は夏の思い出というのが毎年必ずあった。高校2年の夏、大学3年の夏。いつも仲間や恋人と過ごした場所、聞いていた音楽。そういえばここ何年もそういう思い出がないことに気づく。


あの夏特有の匂いもう忘れてしまった。夏だけじゃない。このところ時間が砂時計のようにサラサラと流れていってしまう。


別に昔を懐かしんで悲観的になっているわけじゃない。そこそこ充実はしている。


だけど、何か根本的に質が違う。


あのなんとも言えない、季節の終りに感じる切なさがない。


同じ時間は二度と来ないという切迫感がない。


来年の今頃も再来年の今頃もきっと同じ様なことをしている。そう思ってしまうんだ。


こんなこと考えるのは、僕の心がずっと何年間も止まったままだからなのか。だけど確実に時間は過ぎて行く。


その隙間にふと魔が差しているのかな。


こういうのをやはり悲観的と言うのだろう。