オレはそもそもがそういうヤツだったのだ。
そもそもが誰にも期待しない代わりに
誰からも期待されない
という距離感を愛していたのだ。
それをあの女が土足であがりこんで
来てめちゃくちゃにしていきやがった。
オレは
他者に期待するということを覚えてしまった。
一時はこれは革命的なことで
あの女にオレはバカだから感謝していたのだが、
あの女にとってはやりなれたルーティン作業
でしかなかったわけだ。
出会わなければよかった。
こんなに傷つけられるんなら、
別にあの喜びの日々だっていらなかった。
こんなに自尊心を傷つけられるのなら、
自尊心を大事に扱われた、
実際にはもてあそばれた日々なんか
全然いらなかった。
悪魔に出会ってしまった。
交通事故にあったというべきか。
あいつに会うことで不幸を知った。
そしてたぶんオレはこの傷を一生
抱えていく。
あいつはそんなことは少しも知らず、
幸福な人生を勝ち取るだろう。
ときには悲劇のヒロインを演じながら、
かつてオレがそうしたように
ささえる男を何人か横に従えて。
オレの顔は恥に塗れてしまった。
オレはあいつのおかげで
自分にはギフトがないということを
それまで以上に身にしみて
知ってしまった。
オレは自分の現実を直視する
機会をあいつによって得てしまった。
羞恥と敗北感を植えつけられてしまい、
今後の旅に支障が生まれた。
怒りと恨みを抱えてしまった。
出会わなければこんな思いはせずに済んだ。
オレはお花畑のままでいられた。
自分の弱さと愚かさに気付かずにいられた。
もう遅い。
なにもかも。