最近、不眠に関するニュースが多くなっています。


“眠れない”2倍近くに増加
NHK2011年10月7日 7時1分
 

眠りに就きにくかったり、朝早く目が覚めたりして、日中の生活に支障が出ている人が5人に1人に上り、おととしの2倍近くに増えたことが、ことし7月に行われた全国調査で分かりました。調査した専門家は「東日本大震災をきっかけとしたさまざまなストレスが、被災地に限らず、全国で多くの人に影響を与えたのではないか」と分析しています。

この調査は厚生労働省の研究班が無作為に抽出した全国の20歳以上の男女1259人を対象に、ことし7月に対面形式で行ったものです。その結果、夜、眠りに就きにくかったり、明け方や早朝に目が覚めたりして十分な睡眠が取れず、日中の生活に支障が出るなど、不眠症とみられる人の割合が21%、5人に1人となりました。これは、おととしの12%と比べて9ポイント高く、1.8倍に増えました。被災地の岩手、宮城、福島の3県では「東日本大震災が原因で一時的でも不眠の症状が出た」と答えた人が46%に上りました。調査を行った国立精神・神経医療研究センターの三島和夫部長は「震災をきっかけに将来への不安や経済的な問題などにストレスを感じた人も多く、被災地に限らず、全国で大きな影響が出たのではないか。不眠が長引くと、うつ状態になったり、生活習慣病が悪化したりする可能性が高まるので、放置せずに、かかりつけの医師などに相談してほしい」と話しています。


 

この三島和夫部長は最近大活躍です。震災直前は新しい睡眠薬「ロゼレム」のプロモーションに奔走していました。

 

①平成22年10月26日

ロゼレム錠新発売記念講演会~新しい不眠症治療へ~「不眠症の真の改善をめざして―ロゼレムを如何に活用するか」

講演料:80,000円

 

②平成22年11月26日

天竜医師会セミナー「ロゼレムを臨床で活用するために」

講演料:80,000円

 

③平成22年12月13日

安房医師会学術講演会「不眠症の真の改善をめざして―ロゼレムを如何に活用するか」

講演料:80,000円

 

④平成22年12月16日

ロゼレムTV/PC講演会 特別講演(武田薬品工業株式会社東京本社)

講演料:111,111円

 

⑤平成23年1月25日

24時間社会への処方箋~今求められる生活習慣病治療~「不眠症の真の改善をめざして―ロゼレムを如何に活用するか」

講演料:80,000円

 

⑥平成23年2月23日

磐周医師会磐田市医師会合同学術講演会「ロゼレムを臨床で活用するために」

講演料:80,000円

 

※①~⑥は全て武田薬品工業株式会社から 報酬は合計511,111円

 

彼は、平成22年1月29日薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会でロゼレム承認のために参考人として呼ばれています。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/01/txt/s0129-12.txt

 

恐らく毎月1回ペースでロゼレムのプロモーションを行っていく予定だったのでしょう。しかし、震災により状況が変わりました。彼は震災による不眠の専門家となったからです。

 

そして、彼を中心に「睡眠の日」なるものができました。

http://www.seikatsusyukanbyo.com/calendar/2011/001833.php

 


睡眠薬GLの年内策定を主張
「睡眠の日」を前に三島和夫氏が講演
[2011年9月2日]

 明日9月3日の睡眠の日を前に,睡眠に関するプレスセミナー(主催=ファイザー)が8月31日に東京都で開かれた。講演を行った国立精神・神経医療研究センターの三島和夫氏は「睡眠障害は国民病の1つ」と指摘し,諸外国と比べて敬遠されがちだというわが国の睡眠専門医受診や睡眠薬服用についても言及,国民や医療者の正しい知識と理解の普及を視野に,これまではつくられていなかったという「睡眠薬の使用ガイドライン(GL)の策定を年内に行う」と主張した。



さて、そのファイザーさんは、ついにプロジェクトを立ち上げました。
被災地で講演会を展開していくということですが、解決策として精神科早期受診を推進することでしょう。結果として自社製品の売り上げに結び付きますので、これば純粋なボランティアではないことは明らかです。

そういえば、話題となっているあの映画「ツレがうつになりまして」の公式HPにも、ファイザーさんはぬかりなく登場しています。さすがです。


精神科医や製薬会社が都合よく作った「美談」にだまされ、精神科受診をしてしまった方はたくさんいるでしょう。ええ、そんな美談などまやかしです。本当に人を救うのはうつ病や不眠の診断でも、抗うつ薬や睡眠薬でもありません。精神的におちこんでいる人を助けるのは周囲の人々の助けであり、究極的には自分自身なのです。適切な医学的援助(精神医学的援助じゃないですよ)を含めた周囲のサポートは大切です。しかし、それはあくまで補助的な役割に過ぎません。サポートの結果、最終的にはその人が本来持っている生きる力を取り戻すことで回復に至ります。

薬にできることは、一時的に感覚を麻痺させることだけです。向精神薬が脳のアンバランスを整えるというような説明が多くなされていますが、それは完璧に嘘です。飲み続けることで、生体の恒常性(ホメオスタシス)を高めることはあり得ません。薬という異物が入ってきたことで、本来の機能を果たさなくなって特定の受容体が枯渇したりします。

専門家や薬に依存させるのはこころのケアではありません。その人が本来持っている生きる力を取り戻させること、人生の問題や困難に対処できる力をつけさせること、それこそが本当のこころのケアであり、それができる人こそが本物の専門家です。怪しげだが巧妙な精神医療産業のキャンペーンに騙されないようにしましょう。