宇宙製作所

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さあ、街へ飛び出そう! きっと新しい発見があるでしょう。

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その年、私は恋をしていました。彼とはどこで知り合ったのかは覚えていません。彼が何者で、どこから来たのかも私には謎でした。ただ彼の身体から野菜の腐った臭いがして、それが妙に私の気持ちを乱していたことははっきりと覚えています。とにかく私たちは住居を兼ねた時計台に住んでいました。そこから少し歩いたところに湖があって、そこで私たちは多くの時間を過ごしました。湖の向こう岸には絶えず燃え盛る炎があって、それを二人でいつまでも眺めるのです。何が燃えていたのかはわかりません。眺めることによって、彼との親密さが増すような気はしていました。私たちは毎日、そこに通いました。夜になると、歯車のかみ合う音を聞きながらワインを飲みました。正確に時を刻むには大小様々な歯車が必要で、それらがそれぞれの役割を果たすことを厳しく求められています。私はそんな調和のとれた音に耳を傾けているだけで幸せでした。ところがある朝、時計は止まりました。歯車をかみ合わせたまま、その動きを永遠に葬り去ったのです。もちろん彼の姿はどこにもありませんでした。

 

こんな夢を見ました。夢の中で、僕は猿に囚われています。檻の中から外を見ることしかできませんが、それが猿であることはまちがいありません。理由は二つあります。一つは、臭いです。レタスの腐ったような臭いが僕にそれを猿だと確信させます。もう一つは雨の降り方です。どうやら雨は猿を避けながら降っているようなのです。そして、それが猿であるからこそ雨はその猿を避けるように降っているのだと強く僕に確信させるものがあるのです。いずれにしても僕は今のところ囚われの身として、降り続く雨の妙な降り方を眺めることしかほかにやることがないのです。

 

その旅客船は、毎日たくさんの人々を海の向こうへ運びます。小さな子供からお年寄りまで、実に年齢層は様々です。船が出航する前の楽しみは、近づいてきた雲にさわることです。それは空高くから人々の頭上まで降りてきます。どういった仕掛けになっているのかよくわかりませんが、とにかく綿菓子のようなやわらかそうな雲が手を延ばせば届く辺りまで降りてくるようすはなんだか飼い主にじゃれつくために近寄ってくる無邪気な子犬のようです。そして、人々はそんな愛嬌のある雲をさわることに無上の楽しみを覚えるのです。やがて出航を知らせる汽笛が辺りに響き渡ると、空へ延ばした数々の手は名残惜しそうに引っ込められます。

 

その美術館は森の中にあります。途中で道は左右に分かれていますが、それは目の前の湖をぐるりと回りこむためでどちらを選んでいただいてもかまいません。ただここから少し慎重を期す必要があります。というのは、その二つの道が合流する辺りに一匹の黒猫が深い眠りについていて、もしその黒猫が何かの拍子に目を覚ますようなことになればそれまで鏡のように空の雲をくっきりと映し出していた湖面がふいに巻き起こった風にすっかり乱されてしまうからです。しかし、それをなんとかやりすごすことができれば、後はもう導かれるまま進んでいくだけとなります。たとえ森の奥へ奥へと踏み分けていかなければならないとしても、その頃にはすでに美術館の門は大きく開いているはずですから。