「フジって、変な名前。」
そう言われる事は珍しくなかった。
同じ名前の奴とは出会った事が無い。
名字と間違えそうな名前。
変わった名前だけど、別にどうとも思わなかった。
好きでもないし、嫌いでもない。
ベッドに腰掛けると、何となしに、携帯を開いた。
一件の受信メール。
差出人には「藤原奏」とあった。
「奏」って、綺麗な名前だよな。
そう何度も思った。
***
「フジって、下の名前なの?」
ノートに書かれたフジの名前を見て、思わず僕は聞き返した。
「そうだよ。」
苦笑い混じりに、フジが返す。
屋上でフジと知り合った翌日、僕は初めてフジのフルネームを知った。
フジのノートには、「有本藤」と書かれていた。
「よく言われる、変な名前だって。」
フジが続けて言った。
「そうかな。変わった名前だとは思うけど、良い名前だと思うよ。」
フジによく似合う名前だと思った。
他には無い、唯一無二の世界。
「フジにぴったりの名前だと思うよ。」
そう返せば、フジは少し驚いた顔をした。
「初めてだよ、そう言われたの。」
そう言って、フジは笑った。
「あと、僕の名前にも藤ってつくしね。」
そう付け足して、二人して笑った。
***
「良い名前だと思うよ。」
そう言ってきたのは、カナデが初めてだった。
変な名前だ、それしか言われた事がなかった。
俺はそれで構わなかった。
正直、名前なんてどうでも良かった。
カナデに出会って、初めて少しだけ、自分の名前に興味を持った。
俺に良く似合う名前だと言ってきた。
口にした事は無かったけど、少しだけ、それが嬉しかった。
携帯を開けば、一件の受信メール。
差出人には「藤原奏」の文字。
綺麗な名前だなと、ふと思った。
カナデに良く似合う名前。
俺の名前が入った名前。
少し笑うと、俺は返信画面を開いた。
***
少しずつ、みらいいろのみんなの名前を出していこうかなと思って書いた話です。
フジって本名なんです。
居るのかな、フジって名前の人。