「Horse Riding」

(みらいいろ:記憶回路)


(一)

「おはよ。」

「よー。」

「おはよ。」

「んー。」

教室に入ると、フジとカイトがそれぞれ挨拶をしてきた。

だけど僕は、あまりの眠気に、気のない返事を二人に返して、自分の席に着いた。

「どうした?」

「凄ぇ眠そう。」

二人が笑いながら僕の側に来る。

「寝たの二時過ぎだった。」

「また遅いな。」

机に突っ伏したままの僕の言葉に、フジが返した。

「テレビ見てて。」

「珍しいな。」

僕の一言に、フジが物珍しそうな返事を寄越す。

「あんまテレビ見ないよな、お前。」

カイトもフジに同調してきた。

「たまたまつけたら映画やってて、気になって最後まで見ちゃった。」

「映画とか、尚更珍しい。」

カイトが笑いながら言う。

「何か、ちょっと面白くて。」

「お前が面白いってのも気になるな。」

フジが興味持つ。

「ん、眠いからとりあえず寝る。」

そう僕は言うと、顔を腕に埋める。

「授業中も寝てたら、後でノート見せてやるよ。」

「カイトはあんまり信用出来ない。」

カイトの一言に、半分寝ぼけながら僕は返した。

お前失礼だなと言うカイトの声と
、フジの笑い声、そして教室の喧騒が徐々に遠くなっていった。



***


馬に乗った青年が居た。

風が吹き抜ける草原だった。

小さく、歌を口ずさみながら、青年は馬と風の中を駆け抜けた。

小さな村で、青年は育った。

仲間と一緒に、色々な事を見て、くだらない事で笑い合って、日常を過ごした。

そして、一人の少女を見かける事が好きだった。

小さな幸せを拾いながら、生きていた。

一本の電話で、その日常は終わってしまった。

青年は机の上に置いてあった銃を掴み、家を飛び出していった。

昔の仲間と一緒に、赤い軍服を着て、焼けた村に並んだ。

戦火の中でも、青年は少女の写真をずっと持っていた。

そのすり切れた写真に写る彼女は、どんな晴れた空よりも眩しく見えた。