三番線のホームから 今 手を振るよ夏の国道134号線を、カイトが運転するバイクの荷台に座りながら走っていた。七月頭の、良く晴れた暑い昼下がりだった。鎌倉駅から、江ノ島電鉄に沿う形で、僕らは走っている。今は、ひたすら海沿いを走った。先程、七里ヶ浜を越えたばかりだ。潮の匂いが鼻を掠めた。出かけようと言い出したのは、カイトだった。六月半ばに、突然、都合の良い日を教えろと連絡が来た。返事を出して数日後、七月頭の最初の土曜に、朝僕のアパートまで迎えに行くから準備しとけと返ってきた。言われた通りに待っていた僕を、半ば引きずるようにして、カイトは連れ出した。「ねぇ、何処行くの?」道中、僕は肝心な事を尋ねた。行き先は、全く聞いてなかった。「江ノ島。」事もなげに、カイトは答えた。都内から江ノ島までは、バイクではそれなりに時間がかかる。鎌倉駅に着いた時には、昼も間近な時間だった。「腹減ったな。」運転しながら、少し声を張り上げてカイトが言った。「江ノ島って、まだかな。」周りの騒音に負けないように、僕も声を張り上げる。「もうちょいだよ。ちょっと見えてきた。」カイトの言葉に、僕は前を見た。前方左側に、江ノ島が迫っていた。休日という事もあって、江ノ島はそれなりに混んでいた。駐車場にバイクを停めると、目に付いた店に入り、昼を食べた。時間帯のせいか、店は混雑していた為、食べ終わると、早々に店を出た。特に何をするでもなく、僕らは島を見て回った。「ねぇ、何でまた、出かけようと思ったの?」ベンチに座って休憩している最中、僕はカイトに問いかけた。「何かさ、たまにはお前と出かけてみてぇなって思ってさ。」海を見ながら、カイトは答えた。その横顔を、僕は眺めた。まだ高い夏の日差しに、カイトの茶色い髪が照らされている。きらきらしているように思えて、何だか眩しかった。カイトは遠くを見る目つきで、海を眺めている。どことなく、寂しそうな、懐かしそうな、そんな横顔だった。「この場所さ、前に一度、ヨウと来たんだ。」不意にカイトが口を開いた。「高校卒業した年のゴールデンウイークにさ、ヨウとバイクで来たんだよな。」懐かしそうに笑いながら、カイトは話した。「そん時は、運転してたのはヨウだけどな。」「ヨウ、免許持ってたんだ。」少し驚いた僕の口から、言葉が飛び出した。「俺も知らなかったんだよ。いつの間にか取ってたみたいでさ。」可笑しそうに、カイトは笑った。「今日みたいにさ、二人で海沿いを走って、此処まで来た。」そこでいったんカイトは言葉を切った。しばらくしてから、再び口を開いた。「ヨウの背中ってさ、意外とでかかったんだよ。後ろに乗ってる間さ、ずっとそんな事思ってた。何かさ、何処までも行けそうな気がしたんだよな。」そのまま、カイトは黙り込んだ。僕は海を見た。水平線の彼方に、船が霞んでいた。「この場所にさ、また来たいなって思ったんだよ。お前と来たいなって思った。」そう話すカイトを僕は見た。カイトは小さく笑っていた。「そろそろ帰るか。」そう言って、カイトは立ち上がる。それに僕も続いた。海沿いを、来た道を戻るようにして走る。バイクに不慣れな僕は、行きも帰りも、カイトにしがみついていた。僕にとって、カイトの背中は大きかった。このまま、何処まででも行ける気がした。唐突に僕を連れ出すカイトの強引さは、僕には何だか有り難く感じた。カイトとはこうやって、回想をしては、逃避行を繰り返す。明るい茶髪と、物怖じしない性格とは対照的に、カイトにはどこか影がある。その影は少し怖かったけど、好きだった。立ち止まっても良いって、振り返っても良いって、教えてくれる。そうやって、僕は歩いて行くんだろう。風を切る音に混じって、海鳴りが聞こえてきた。焼け付く日差しに、夏の始まりを感じた。***talk byKanade from みらいいろ*****RADのドリーマーズ・ハイのPVに影響されまして。笑あと、アジカンのサーフ ブンガク カマクラを聴いてたら、思いついた話です。笑思えば、カナデくんとカイトだと、過去に向かう話が多い気が。モデルが二人共、昔の竜太朗さんだからかな。おかっぱと茶太朗。江ノ島、行きたいなー。