忘れないでね 帰る場所がある事を年が明けて一日経った今日、僕は地元を回った。久々に、年末年始を地元で過ごした。何年経っても、この町は何一つ変わらなかった。一通り見て回ると、上京前にみんなで星を見た土手に向かった。新年のこの時期、町はどこか閑散としている。色々歩き回っても、誰にも会わなかった。土手には誰も居なかった。芝生の枯れた土手に腰を下ろす。冷たい風が吹き抜けた。首元で、切り揃えた髪が揺れた。今、地元に居るのは、僕だけだった。みんなは、それぞれの実家に帰っている。ヒロは、年末早々に実家に行き、他の三人も、大晦日になる前に、実家に帰った。置いてけぼりを食った僕は、久々に、実家で年明けを迎えた。年末年始は、ほとんど一人で過ごした。カイトもバイトが忙しいらしい。初詣やヨウの墓参りには一緒に行ったけど、なかなか時間を合わせる事が出来ない。フジ、リュウ、タケの三人の実家は、同じ関東圏内だった。とはいえ、すぐに会える距離じゃない。ヒロに至っては、東北の端っこだった。ふうっと、一息吐いた。白い息が、冬の冷えた空気に消えていった。ここまでのんびりしたのも、久々かもしれない。みんなが居ないと、やっぱり寂しいな。まぁ、帰れる場所があるっていうのは、幸せな事なんだろうね。僕にも、帰る場所がある。日々に流されて、忘れそうになるけど、この町は、変わらず僕を待っていてくれる。忙しい日々が、その事を教えてくれる。帰れなくなった僕に、帰り方を教えてくれる。空を見上げた。新年の空は、良く晴れた冬空だった。携帯を開くと、一件のメールが届いていた。相手はフジだった。明日には、地元に帰ってくるといった内容だった。立ち上がり、僕は歩き出した。迷ったら、この町に戻ってくればいい。この場所に戻ってきて、空を見上げればいい。ここが、僕の帰る場所なんだ。歩きながら、僕はフジに返事を送った。***talk byKanade from みらいいろ