「エとセとラ」

(みらいいろ・回想録)


(五)

「フジ。」

病室からフジが出てきた。

心なしか、強ばった表情をしているように見える。

「今寝てるよ。熱が酷くて、ちょっと危ない状態みたいだって。」

僕は病室に入った。

白いベッドの上で、カナデが寝てる。

熱のせいか、頬が赤い。

その反面、血の気の無い顔をしている。

細い腕に打ってある点滴が、何だか痛々しい。

カナデが熱を出したのは、もう一ヶ月以上前。

上がったり下がったりを繰り返し、二週間程前に高熱で入院した。

無理してたのかな。

丈夫じゃないのに、カナデは頑張り過ぎる事がある。

弱音を吐く事はあんまり無い。

知らず知らずの内に、体に負担がかかっちゃったんだな。

僕は椅子に座ると、カナデの顔を覗き込んだ。

二人乗りで揺らしていた心は、片方抜けてしまった。

ねぇ、一人じゃ意味が無いんだよ。

僕は迷子だよ。

帰ろうにも、辿った道が分からない。

乗る人の居ないブランコは、ただ寂しく揺れるだけ。

待ってるからさ。

僕の後ろは空いたままだから。

君が帰ってこれるように、空けておくからさ。

それまで、一人分の自転車を漕ぎ続けるよ。