「エとセとラ」

(みらいいろ・回想録)


(三)

「月、綺麗だね。」

スタジオからの帰り道、隣でカナデが空を見上げながら言った。

僕も見上げる。

月が明るく、僕らを照らしていた。

今日は満月かな?

僕らは何となく、いつもの公園に寄った。

「何だか、昼間とは全然違うね。」

そう言いながら、カナデはいつものベンチに腰掛けた。

しんと静まりかえった公園。

辺りに漂うのは、夜の闇だけ。

僕は隣に座るカナデを見た。

カナデは空を見ていた。

その視線の先には月があった。

「月を見てるとさ、何だか許されてる気になるんだ。」

ぽつりとカナデが呟いた。

「歩いてるからさ、星が揺れるんだよね。」

その言葉は、誰に言うでもなく、独り言のように聞こえた。

不意にカナデが立ち上がる。

カナデは、少し離れたところにあるブランコに座ると、ゆっくりと漕ぎ出した。

夜の闇と同じ色をしたカナデの黒髪が、小さく揺れていた。