「ドリーマーズ・ハイ」

(みらいいろ:記憶回路)


(十二)

もう年末も間近だった。

不意に携帯が鳴った。

相手はリュウだった。

「ヨウの事、聞いたよ。」

震えてる声で、リュウは呟くように言った。

いつもの明るさは、全く感じられなかった。

「ごめん、そっち行けなくて。」

受話器越しに、リュウが謝罪する。

「良いよ。お前らだって、今大変なんだろ?」

今月の頭に、リュウから久々に連絡を貰っていた。

受話器から聞こえるリュウの声は、どことなく元気が無かった。

どうしたのかと問いかければ、リュウはいったん言葉を切った。

「カナデがバンドを辞めたんだ。」

全く予期しなかった出来事に、俺はしばらく言葉を失った。

訥々と、リュウは近況を話した。

十月に入ってしばらく、突然カナデがバンドを辞めると言い出した。

あまりにも突然で、話についていけなかったと言っていた。

リュウとヒロとタケの三人は、必死で止めた。

フジは止める事はしなかった。

ただ、酷く悲しそうな顔をしてたそうだ。

バンドは今、活動休止中らしい。

「解散はしないよ。新しいバンドを始める気もない。」

リュウは、きっぱりとそう言い切った。

「カナデが戻ってくるのを待つよ。カナデじゃなきゃ、ボーカルは嫌だもん。」

最後に、リュウはそう言った。

「カナデ、元気そうか?」

「分かんない。あれから会ってないんだ。連絡は入れてるけど、出ない。」

俺の問いかけに、リュウは心配そうに言った。

しばらく間を置いて、リュウは再び喋り出した。

「みんなで決めたんだけどさ、ヨウの事、カナデにはまだ言わない事にした。」

いったん途切れる、リュウの言葉。

「落ち着くまで待ってようって。」

リュウの言葉は静かに響いた。