「ドリーマーズ・ハイ」

(みらいいろ:記憶回路)


(十)

十二月に入ると、何となく忙しない雰囲気が町を覆う。

バイト帰りに、たまにヨウと駅前で会っては、相変わらず二人で喋っては笑い合った。

慌ただしく行き交う人波から、俺らだけ取り残されたような感じだった。

この不思議な感じが、俺は好きだった。

十二月頭のある日、ヨウから話したい事があると言われて、いつものように駅前に向かった。

「上京しようと思ってるんだ。」

ヨウは一言、しっかりとそう言った。

「まだ未定だけどな。」

そう言って、ヨウは笑う。

「そっか。何か寂しくなるな、ヨウまで居なくなると。」

俺はそう言うと、白い息を吐き出して、空を見上げた。

「でもまぁ、頑張れよ。」

空を見上げたまま、俺は言った。

「それでさ、カイトに一つ、約束して欲しい事があるんだ。」

ヨウの一言に、俺は視線をヨウに向ける。

「俺が上京してさ、またこの町に帰ってきた時に、今最高に楽しいって言って欲しいんだ。」

そう言って、ヨウは笑った。

「俺もさ、帰ってきた時に、凄ぇ楽しいって言う。」

俺はヨウの顔を見た。

正直、今の俺にとって、その約束は少し怖かった。

果たせる自信も無い。

だけど、思ったんだ。

ヨウのこの笑顔を見て、きっと大丈夫だって。

「分かった。約束な。」

そう言って俺は笑うと、ヨウと拳を合わせた。

その時のヨウの笑顔を、俺は忘れなかった。

そして、これが最後に見たヨウの姿で、最後に交わしたヨウとの言葉だった。