「monophobia」

(みらいいろ:記憶回路)


(七)

いつもの公園のベンチに座り、ぼんやりと辺りを見回していた。

あれから数日、僕は無気力状態で過ごしている。

ぶっ殺してやるなんて息巻いたところで、僕はそんな事は出来ない人間だって分かってる。

周りに当たったって仕様がない。

世界なんて、そんなもんなんだ。

世界に向けて攻撃したって、結局は虚しくなるだけだ。

そうだ、最初から答えは出てるんだ。

世界を恨むのはお門違いだ。

結局は僕自身が問題なんだ。

普通に馴染めないのなら、死ねばいいんだ。

簡単じゃないか。

いつもより、ちょっと深く手首を切ればいいだけだ。

そうすれば、全部終わるんだ。

だけどいつも、あるところで手が止まる。

痛いし怖いし、それ以上は切れなかった。

結局僕は、世界も自分も恨む勇気は無かったんだ。

生きていくのは苦しい、かと言って、死ぬ勇気も無い。

何でこうなったんだろう。

いつもの自問自答を繰り返す。

前はこんなんじゃなかった。

夢中になれる事なんて、沢山あった。

友達だって居た。

普通に笑えてた。

今じゃ、その全部が無いに等しい。

どうしてだろう。

何が原因だろう。

思い当たるのは、みんなと離れ離れになった事。

ただそれだけ。

だけど、それが僕にとっては大問題だったんだ。

僕は積極的で、明るくて、みんなのムードメーカーだった。

みんなは僕をそう見ていた。

僕もそうだと思ってた。

だけど本当は、一人になるのが怖かったんだ。

寂しくて、怖くて、仕様がない。

もう会えないわけじゃない。

会おうと思えば、いつだって会える。

こんなに堕ちる事はないんだ。

ちょっとの間寂しいだけさ。

普通に過ごせるはずさ。

だけど、もうその普通さえも分からなかった。

何度も思った。

普通に学校に行って、普通に喋って。

簡単な事さ、誰だってやってるじゃないか。

だけど、何でだろう。

何でこんなに、毎日が苦しいんだろう。

何でこんなに、普通が辛いんだろう。

思考はぐるぐる渦巻いて、いつものように、行き場を無くした。

結局、僕が問題なんだ。

世界を恨んだって仕様がない。

もう帰ろう。

立ち上がろうとして、不意に気配を感じた。

顔を上げる。

目に入ったのは、長めの黒髪の高校生。

「久しぶり。」

小さく笑って、フジはそう言った。