「monophobia」

(みらいいろ:記憶回路)


(四)

学校は息苦しいけど、かと言って家に帰る気にもなれなかった。

僕はそのまま、地元をふらふらと歩き回った。

何となく、中学の時にみんなで遊んだ公園に寄った。

ベンチに座り、ぼんやりと空を眺める。

僕は空が好きだった。

この時だけは、穏やかな気分になれる。

不意に、僕の前を一人の男が通り過ぎようとした。

男は僕を見ると、「あっ」と声を上げた。

「リュウ、久しぶり。」

笑いながら僕の隣に座る、茶髪のそいつ。

一瞬、誰だか分からなかった。

「久しぶり、誰だか分からなかったよ。」

僕はカナデに笑いかけた。

カナデに会うのは、少し久しぶりだった。

茶髪にしていた事も知らなかった。

夜闇のような黒髪が特徴的だったカナデが茶髪にするなんて、結構驚いた。

僕らはたわいもない事で笑い合った。

カナデは、学校での事を話してくれた。

フジとは相変わらずな事。

カイトと一緒に、文化祭でバンドをやった事。

彼女が出来た事。

楽しげに話すカナデを見てると、僕まで楽しくなってきた。

だけど、それと同時に感じる、妬ましい気持ち。

今カナデにあるものは、どれも僕にはないものだった。

こんな嫉妬、みっともないって分かってる。

だけど、どうしようもなかった。

ここで僕は、カナデが制服ではなく、私服である事に漸く気付いた。

どうしたのかと問いかける。

「ここ数日、熱出して休んでたんだ。だいぶ良くなったから、散歩に出かけたんだ。」

カナデは病弱だった。

季節の変わり目で、体調を崩しやすいんだろう。

今更ながら、僕は申し訳なくなった。

僕はカナデと別れると、帰路に着いた。