「キャッチボール」

(みらいいろ・回想録)


(四)

「フジ、見て。」

カナデが少し離れたところで呼ぶ。

振り返ると、カナデの右手に何かがある事に気付いた。

差し出された右手を見れば、それは使い古されたゴムのボールだった。

この河川敷には、遮る物が無い。

誰かがキャッチボールなんかをした時に、転がって忘れられたやつだろう。

不意にカナデが距離を取る。

そう思っていると、いきなりボールを投げてきた。

不意打ちを食らった俺は、とっさにボールを避けた。

「キャッチボールしよう。」

唐突な一言。

カナデを見れば、楽しそうに笑ってる。

俺はボールを拾うと、カナデに向かって投げた。

そんなやり取りを、俺らはしばらく続けていた。

気が付けば、いつの間にか夕焼けは終わっていた。

だけど、カナデは一向に止めようとしない。

時々、コントロールを無視したボールを投げてくる。

取れるわけねぇだろ。

そう思いながらも、俺はボールを拾いに走った。

だから俺も、割と本気になって投げる。

運動が苦手なカナデは、上手く取る事が出来ず、何度もボールを追いかける。

カナデは楽しそうに笑いながら、何度もボールを俺に投げた。