「みらいいろ‥3月11日‥」


(九)

三月も終わりに近付いた頃から、僕らはスタジオに行き始めた。

久々のみんなの音。

居心地の良い時間と空間。

そして同時に、ライブをやりたい欲求が膨らむ。

ある日、リュウが僕らをスタジオに呼んだ。

何だか、やたらと嬉しそうな顔をしている。

怪訝に思いながらも、僕らはリュウの言葉を待った。

「四月にさ、ライブが決まったよ。」

一瞬、みんなが言葉を失った。

「それ、冗談とかじゃなくて?」

ヒロが、信じられないとでも言いたげに言う。

「冗談で、僕がこんな事言わないよ。」

苦笑い混じりにリュウが言った。

自然と、みんなが笑い出した。

ライブ本番は、四月十一日。

震災から、ちょうど一ヶ月後だった。

それから、スタジオでみんなの笑顔が増えたのは、きっと気のせいじゃない。

「なんて言うかさ、こうしてみんなで合わせてんの、凄ぇ楽しいよな。」

ぽつりとフジが呟いた。

ちょっと前までは、これが当たり前だった。

当たり前が、当たり前じゃなくなったあの日。

側に居てくれるみんなは、当たり前なんかじゃないんだ。

当たり前に過ごすこの日常が、実は一番の奇跡だったりする。

だからさ、ちゃんと僕らは今を生きるよ。