その遠心力で横転した 原型をとどめてない幸福「みらいいろ:番外編」「お疲れ。」リュウの一言で、みんなで一斉に缶ビールを合わせた。久々のライブも無事終わり、今は打ち上げの最中。ちなみに、ここは僕の部屋。「たまにはさ、お前んちに行ってみたい。」ライブ後、打ち上げしようという話になり、フジがこう言った。フジの一言に、他の三人が一斉に賛成した。リュウなんか、やたらとはしゃいでたっけ。そんな感じで、久々にみんなを部屋に入れた。「相変わらず、生活感の無ぇ部屋。」入るなり、フジがそう言って笑う。みんなで適当に座り、買ってきた酒を配る。そんなこんなで、今に至っている。「今日は本当に最高だったよ。」多少酔いが回ってきたフジが言う。「本当、お前の歌は最高だよ。世界一だ。」普段のフジなら絶対言わないような台詞に、僕は恥ずかしくなって苦笑いを返す。「いや、でもまじで最高だぜ。」僕の向かいで、タケが賛同してきた。「お前の歌っていうか、声はさ、人を引き付けるっていうかさ。」一口酒を飲むと、タケは言葉を続ける。「聴いてて、何か居心地良いんだよな。」タケの隣でヒロが、感動するよなんて言ってくる。酔ってるとはいえ、こうも誉められると、嬉しいを通り越して、何だか恥ずかしいな。ん?ふと、左側に重みを感じた。何かと思ってみると、リュウが僕にもたれかかっていた。「リュウ?」寝ちゃった?そう思っていると、いきなりリュウが僕に抱きついてきた。「ちょ…ちょっと…!!」慌てた僕は、リュウを引き剥がそうとした。「うー、ちょうど良い抱き心地。」意味の分からない事を言いながら、さらに僕に抱きつく。「フジー、お酒ー。」リュウはフジに手を伸ばしながら、酒をねだる。「お前、どんだけ飲む気だよ。」もう無しと苦笑いしながら言うフジに、「ケチー」と頬膨らませるリュウ。てか。「フジ、助けてよ。」僕は少し焦りながら、フジに助けを求めた。「えー、そいつ酒癖悪ぃんだもん。」フジは苦笑いしながら、ご愁傷様とでも言いたげに言う。僕は他の二人を見た。タケとヒロは、いつの間にか寝てる。最悪だな。「ねぇ、ねぇ。」「リュウ、顔近いから。」何で僕だけこんなに焦ってるんだろ?「何か歌って。」「へ?」歌って歌ってと、リュウは大声で僕にねだる。「リュウ、今夜中だよ?歌えないって。」「えー、ケチー。」「近所迷惑でしょ。」「何だよー。おかっぱ座敷童のくせにー。」「それ、関係ないでしょ。てか声大きいって。」近所迷惑だって。ふと、部屋が静かになっている事に気付いた。フジの方を見れば、いつの間にか寝ていた。ああ、何で僕だけこうなってんだろ。思わず溜息を吐くと、不意に左腕をリュウに掴まれた。「まだ痛い?」一瞬、訳が分からなかった。すぐに傷の事だと気付いた。「まだちょっと痛いけど、大丈夫だよ。」「もう切ってない?」「切ってないよ。」リュウがやたらと心配そうな顔で聞くもんだから、僕は驚いてしまった。まぁ、僕の自傷行為に関しては、リュウは凄く心配してくれたしね。僕の返事に安心したのか、リュウは笑った。「正直、止めては欲しいけどさ、あんまり無理しないでね。」そう言うと、リュウは床に寝転がる。少しして、寝息が聞こえてきた。ふと、僕は我に返った。いつの間にか、みんな寝ちゃうし。しかもここ、僕の部屋だし。男が五人も居れば、それは窮屈なわけで。僕は小さく溜息を吐いた。でもまぁ、こういうのもたまには悪くないな。久々に、何だか楽しかった。僕は小さく笑うと、隅っこに寝転がった。翌日、大家さんにはたっぷりお説教を食らったけど。(ご愁傷様。)(フジも同罪でしょ。)(ねぇ、昨日あれからどうしたの?)(……リュウは知らなくていいよ。)***突発的に書きました。笑サイトの方にもあります。番外編も、徐々に増やそうかな。