「みらいいろ」


(七)

三月の空の下を、僕は歩いた。

吹き抜ける風に、春の気配を感じる。

何だか、視界が開けて変な感じだ。

そんな事を思ってる内に、いつもの公園に着いた。

ふと、足を止めた。

いつも座ってるベンチに、見知った後ろ姿を見つけた。

風に吹かれ、綺麗な黒髪が揺れている。

隣には、ベースが立てかけてあった。

僕は後ろからそっと近付くと、思いっきり肩を掴んだ。

驚いた顔のリュウが振り返る。

「びっくりした。脅かさないでよ。」

苦笑いをしながらそう言うリュウに、僕は笑った。

不意に、リュウが真顔になる。

「前髪、切ったんだね。」

視界を塞いでいた僕の前髪は、目の少し上で切り揃えた。

「久々に顔を見た気がする。」

「余計、座敷童みたいになった」と言うリュウの頭を、思いっきり小突いた。

僕はリュウの隣に腰掛けた。

久々に、僕らはまともな会話をした。

どうやらリュウは、よくこの公園に来ていたみたい。

たまに僕を見かける事もあったが、声をかけづらい雰囲気だったらしい。

リュウの話を聞いて、思わず笑ってしまった。

「あのさ、リュウ。」

僕の言葉に、リュウが僕を見る。

僕は言葉を続けた。

「タケの事、僕もバンドに誘おうかと思ってる。」

その言葉に、リュウは驚いた顔で僕を見た。

「え?バンドに戻ってくるの?」

「分からない。」

それが、今の僕の正直な気持ちだった。

自分が何をやりたいのか、まだ分からなかった。

ただ、諦めきれないのなら、もう一度やり直しても良いかなって思ったんだ。

「戻ってくるなら、歓迎するよ。僕は君の歌が好きだから。」

この間と同じ事を、リュウは言った。

「ヒロもタケも、君の歌が好きなんだよ。フジなんか、あいつの歌以外でギター弾きたくないって言ってたし。」

僕は思わずリュウの顔を見た。

リュウは真剣な顔になっていた。

「君はさ、自分を低く見過ぎてると思うよ。自信持って良いと思うんだけどな。」

僕は思わず笑ってしまった。

結局、みんなには僕の事なんて、お見通しなんだな。

僕はリュウと別れて、帰路に着いた。

駅から、徒歩約10分の安アパート。

そこで、僕の小さな世界は回り続けている。

未だにさ、自分の事は好きになれていないよ。

それでもさ、まだ僕は僕と付き合っていこうと思うよ。

もういいよ、もう難しい事を考えるのはやめたんだ。

これから何をしようか。

しばらくはまだ、のんびり過ごしていても良いかな。

またバンドを始めようか、悩んではいる。

まぁ、ゆっくり決めていくよ。

光と闇を繰り返しながら、僕はここで生きていくんだ。


end