孤独な道標 【第十章】~不吉な予感①~ | 二足の草鞋

孤独な道標 【第十章】~不吉な予感①~

【第十章】
≪不吉な予感①≫

あの悪夢から何の音沙汰もなかった。淳介からのメールや電話、待ち伏せもなかったから何か企んでいるのではないかと少し心配ではあったが、みるきーとの幸せに変わるものはなかったから、淳介のことを少し忘れかけていた。

年末、実家に帰省した際に書いたブログに対し、意味深なコメントに私は異様な恐怖を感じた。

投降者はジュンとなっていたのがとても気になった。以前から、メールアドレスの中や、ネット上のハンドルネームによく“ジュン”と名乗っていたからだ。

『みるくさんは、リラックマ好きなんですね。僕の元彼女もリラックマのぬいぐるみが好きだったんですよ(^^)』

私はすぐ、みるきーにこのコメントのことを話したが、そんなに心配することないよ・・・と言ったから、そんなに気に留めなかったけれど、なんとなく私の心の中に蟠りを残した。

Y子からはあれから連絡もなかった・・・かと言って自分から連絡することは出来なかった。もし、ここでまだY子と淳介が繋がっていて何か攻略を練っているかもしれないと思ったから。

それ以来、このジュンという名前でのコメントが頻繁ではなかったから、淳介という疑いは消えていった。

1月になり、私の誕生日が間近になった頃、会社に電話があった。淳介からだった。
「みるく。久しぶりだな。もうすぐ、おまえの誕生日だな。なあ、住所教えてくれよ。そしたら誕生日プレゼント贈るからよ。」
「要らないよ、そんなの。もう、いい加減やめて・・・。」

「そう遠慮すんなって。A駅のすぐ側なんだろ?教えて損はないから教えろよ。」

「A駅って・・・Y子から聞いたのね。淳介は今、Y子と付き合っているんでしょ?」
「いや、俺はY子とは付き合っていない。Y子が自分から俺に尻を振って媚びてきたんだからな。」
「Y子・・・可哀想。」
浮気しないって言ったじゃない。それなのに、あたかもY子や他の女が悪いみたいな言い方して・・・。淳介は私のことを取り戻すためなら手段を選ばないんだ。
昔、私と一緒になれるためなら天に背いても怖くはないって言っていたけれど、もはや天に背くどころか悪に手を染めた淳介の執念が恐しく思えた。
「相変わらず、お人よしなんだな、みるくは・・・。まあ、いい・・・今日のところは諦める。覚えているだろうが、この前のことを雑魚に知られたくなければ素直に俺に従ったほうがいいぞ。」
淳介はクスリと笑い電話を切った。やっぱり淳介は私を脅してきた。もし、この前のことを淳介がみるきーに言ったとしても、みるきーが淳介のことを信じるワケがない。
私の心はもう、この脅しが始ってから淳介に傾くことはなかった。よく愛と憎は紙一重だというけれどまさしくそんな感じだった。
淳介の心が悪に染まってしまったのなら、私の心はその悪の血で血を洗うわ。私はもう、淳介のもとには戻らない。