2026. 5. 13(水) 19 : 00 ~ 福岡シンフォニーホールにて
<第439回 定期演奏会>
~ 武勇伝の真否 ~
R. シュトラウス:交響詩《ドン・ファン》Op.20
テレマン/ キンボー・イシイ編:組曲「ドン・キホーテのブルレスカ」
第1曲:序曲
第2曲:ドン・キホーテの目覚め
第3曲:ドン・キホーテの風車への突撃
第4曲:ドゥルネシア姫に寄せる愛のため息
第5曲:かつがれたサンチョ・パンサ
第6曲:ロシナンテのギャロップ
第7曲:サンチョ・パンサのロバのギャロップ
第8曲:眠りにつくドン・キホーテ
R. シュトラウス:交響詩《ドン・キホーテ》
(ソリスト(Vc)アンコール)
カタルーニャ民謡/ パブロ・カザルス編:鳥の歌
チェロ:タマーシュ・ヴァルガ
ヴィオラ:杉田恵理
指揮:キンボー・イシイ
九州交響楽団
コンサートマスター(客演):鍵冨弦太郎
先月あった九響の今シーズンの開幕公演は残念ながら行けなかったので、私にとってはこの日が今年度初の九響
今回ウィーン・フィルの首席チェロ奏者、タマーシュ・ヴァルガさんがソリストで共演
がなんつっても一番の楽しみだった![]()
今回の定演は「武勇伝の真否」と題してドン・ファンとドン・キホーテを扱ったもの。
30分前
からイシイ氏のプレトークがあったが私はぎりぎりに到着したのでほとんど聴けなかった。
1曲目は リヒャルト・シュトラウス(1864-1949) の交響詩《ドン・ファン》。
R. シュトラウスの波乱万丈の生涯については以前書いたことがあります。
この作品はリヒャルトが1888年(24歳時)に作曲した交響詩。初期の管弦楽曲で彼の出世作とされる。理想の女性を追い求めて遍歴を重ねるスペインの伝説上の人物、ドン・ファンを主題としたニコラウス・レーナウの詩に基づいている。
これ今までも何度も聴いている。最近では昨年11月にマケラ&RCOで聴いた。
この曲で何が何を表しているか、という詳細はwikipediaに載っていたのでそれを引用します![]()
リヒャルトは14曲の交響詩を書いているが、全部これがこれを表現、ってな感じですごく細かいですよね。 でもそれを知って聴くとまた面白みが増すんですよね~。
冒頭、情熱的な弦の上昇音型➡「悦楽の嵐」のテーマ
すぐに木管の下降音型➡理想の女性を表すテーマ(5小節目)
続けて弦と木管・ホルンでドン・ファンの行動力を表す第1のテーマが提示(9小節目)
小休止の後、独奏ヴァイオリンの美しい旋律
➡最初の女性
が提示(D、2小節目)、木管が最初のランデヴー
を表す(D、19小節目)
音楽は次第に切迫感を高めていき、強烈な不協和音➡ドン・ファンの失望
(F、21小節目)
弦楽器で第2の女性
が現れ、オーボエ
の魅惑的な旋律でランデヴー
が展開(L、4小節目)
ホルン
の強奏による有名なメロディーが出る(N、19小節目)
➡ドン・ファンの第2のテーマで彼の不満
を表すとされる(月刊九響の解説には自信に満ちた雄姿とあった)
それまでのドン・ファンのテーマや女性のテーマが交錯
➡女性を追い求め、満たされぬドン・ファンの苦悩と焦燥
が描かれる
いったん静かになるが(V、10小節目)、再び冒頭のドン・ファンのテーマと第2のテーマが回帰し、絢爛たるクライマックス
を築く(W)
三たび冒頭のテーマが出るが、音楽は速度を増し、壮絶なカタストロフ![]()
全休止の後(Cc、17小節目)曲はホ短調に変わり、ドン・ファンの悲劇的な死が暗示される![]()
(月刊九響の解説には、全休止の静けさを破るトランペット🎺の鋭い音が決闘でドン・ファンの肉体を貫いた剣の一撃を表し、震えながら下行する弦楽器が心臓の鼓動の弱まりを暗示しているとのこと)
「薪は燃えつくし、炉は冷たく暗くなった」のである(練習番号はアイプル社の総譜による)
で、実際の演奏はというと、個人的には全体を通してなんとなくバラついた感じがした。
今日は弦は対向配置、ティンパニなどの打楽器がいつもと違って舞台上手側に置かれていた。
そのせいか、いつもと違う音の聴こえ方に違和感を感じてしまった。金管や打楽器が突出して聴こえてきて全体のブレンド感に欠いたように思えたのだ(でも後半は違和感なかったので耳が慣れたんだろうw)。音はガンガン鳴らしていたが、ガチャガチャしててうるさかった(あくまで主観です)。ただホルンのあの雄壮な旋律部分やオーボエのソロはとてもよかった。
この日の配置はこんな感じ
2曲目はゲオルク・フィリップ・テレマン(1681-1767) の組曲「ドン・キホーテのブルレスカ」をキンボー・イシイ氏が編曲したもの。
これが非常に面白かった![]()
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これ原曲はチェレスタと弦だけでの演奏だと思う(予習した映像ではそうだった)が、イシイ氏の編曲で採り入れられた打楽器の効果が大!第3曲の風車への突撃場面ではウィンドマシーンが、ロシナンテやロバのギャロップでは太鼓などが活躍、原曲よりも各々の場面が想像しやすかった
イシイ氏によると、「屋外で大道芸とともに演奏することをイメージして打楽器を採り入れ、当時の奏法や装飾音などの音づかいを尊重した編曲にした」とのこと。ちなみにイシイ氏はテレマンの生誕地のドイツ・マグデブルクの劇場で長年 音楽総監督を務めるなど、テレマンに深いゆかりをもっているそうだ。そのマエストロ、衣装替えまでして振りも感情たっぷりだった。
風車の突撃の第3曲の最後ではウィンドマシーンの音が静かに止むと同時にイシイ氏もガクっとうなだれたり、終曲の最後では、各奏者が演奏が終わると同時に順番にうなだれて居眠りする様子を表したりなど心憎い演出
弦の音色もとてもきれいで、ドン・ファンよりも私はこっちの方が印象に残った。
2曲目演奏中![]()
マエストロは衣装替えしてました![]()
後半は再び R.シュトラウスの交響詩《ドン・キホーテ》。
私はこれを聴くのは2回目。前回は2019年11月にメータ&BPOでミューザ公演で聴いた。
その際に書いたものを一部引用します。
スペインの作家セルバンテスが書いた「ドン・キホーテ」は、騎士道小説に夢中になりすぎて妄想にとらわれた郷士が、自らをドン・キホーテと名乗り従者サンチョ・パンサと旅する冒険話。 R.シュトラウスは「ツァラトゥストラはかく語りき」(1896年)のあとにこの曲を作曲、1897年に完成、翌年に初演した。
この曲では基本的にはチェロ独奏がドン・キホーテを、独奏ヴィオラがサンチョ・パンサを担うが、ドン・キホーテがサンチョと議論を交わす場面ではコンマスがドン・キホーテの役割を担う。 独奏チェロが直接独奏ヴィオラを音楽で会話を交わすのは、意外にも第10変奏でドン・キホーテが騎士に敗れ、故郷に帰る際のほんの4小節だけ。
騎士物語を読みすぎて空想と現実の区別があいまいになっているドン・キホーテ。従者サンチョ・パンサを連れて冒険の旅に出発➡序奏:ゆるやかな対位法のあとにチェロとヴィオラによる二人の主題
道中、風車を巨人と思い込んで突撃、風車の羽に弾かれて敗北➡第1変奏:チェロの突進と、風をあらわすハープのグリッサンド
老いぼれ馬に乗って羊の大群に飛び込んだあげく➡第2変奏:金管楽器による羊の鳴き声
正気に戻れというサンチョと口論になり➡第3変奏:幻想曲風にチェロとヴィオラが展開
懺悔者たちが手にする像を貴婦人だと思い込み突進するが、村人たちに痛めつけられて失神➡第4変奏:ファゴットと金管のうやうやしい和音
貴婦人ドゥルネシアへの愛を誓いつつ見張りに立つが、➡第5変奏:チェロ独奏、そしてハープを用いたカデンツァ
その思いが熱く燃え上がった末、村娘をおいかけまわし、➡第6変奏:オーボエのアンサンブルと立体的音響
挙句の果てに娘たちにからかわれて、空を駆ける馬に乗っていると思い込む➡第7変奏:ウィンドマシーンが飛行を表現
舟に乗って水車に突撃するも水ちゅうに落ちてしまう➡第8変奏:トロンボーン、そしてチェロのピチカートが水を弾く
2人の修行僧を悪魔と思い込んで追いかけ回した末にあらためて旅に出発しようとする➡第9変奏:ファゴット2本による修行僧の描写
決闘で敗北して引退を決める➡第10変奏:トランペットによる戦闘シーン
そして、過去を回想するドン・キホーテは、最後はチェロの下行グリッサンドと共にあの世に旅立つのだった。
この作品についてもっと書きたかったのですが、とても長くなりそうなので
また別記事にしたいと思います。
今回のソリストはチェロは現ウィーン・フィル首席奏者のタマーシュ・ヴァルガさん、ヴィオラは杉田恵理さん。 ヴァルガさんは指揮者の前に、杉田さんもヴィオラ群の首席の位置に![]()
ヴァルガさんと杉田さんの配置はこんな感じ
で、実際の演奏について。
めちゃめちゃ素晴らしかった![]()
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通常の演奏でもヴィオラはそうだと思うが、チェロはソロとしての出番がくるまではトゥッティで弾いていた。これは後述の記事によるとヴァルガさんの希望とのこと。ただ、これウィーン・フィルの方達よくやってますよね。以前シュトイデさん、キュッヒルさん、コルさんなどなどソリストとしてオケと共演したのを聴いたときも、それぞれ自分の出番までトゥッティで弾いていらした。 前述したBPOでこの作品を聴いたときのソリストのクヴァントさん(Vc)は出番までは待機してらした(普通はこっち)ので、ウィーン・フィルってそういうスタイルが普通なのかもしれない。
全体を通してのアバウトな感想で恐縮ですが、途中からはソリスト&オケがまるで”ゾーン”に入ってるかのような演奏で、誰がどうこう、というんじゃなく、皆さんとても素晴らしかった![]()
ヴァルガさんの演奏はオケの中では何度も聴いたことがあるが、こうしてソリストとして聴いたのは私は初めてだったが、めちゃめちゃ素晴らしかった![]()
第5変奏の夜の見張りのシーン。ここの独奏チェロの朗々と謳い上げるカデンツァはお見事![]()
そして杉田さんのヴィオラも超よかった
こんなに響いてくるのだな!とびっくりした。
最後、フィナーレの始まりで主題で使われた5つの音が再び出てくる。曲の冒頭でのこの主題は滑稽さを感じるのが、終曲で聴くとなんとも物哀しく、”死の予感”を感じさせる。
BPOのクヴァントさんに言わせると、『1つの主題によって作品が大きな括弧でくくられる。』
ドン・キホーテが静かに息をひきとるチェロのなんともいえないグリッサンドの際は思わず涙が
当然のごとく拍手喝采![]()
、ブラボーが飛び交う中、なんとヴァルガさんのアンコールが。
私の席はステージからはるか遠いので、英語で曲紹介されるヴァルガさんのお言葉はよく聴きとれなかったのだが、(あとで後述の記事をみたら、「複雑な音楽のあとにはシンプルな音楽を」的なことをおっしゃってたらしい)最後の曲名だけは聴きとれた。
なんとー
カザルスの「鳥の歌」![]()
曲名聴いただけで私の涙腺はもはや崩壊w![]()
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ヴァルガさんの「鳥の歌」、この上なく素晴らしくて素晴らしくて・・・大泣![]()
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またクヴァントさんの話になるが、クヴァントさんはドン・キホーテを演奏する毎に原作を読み直すそう。自分の思うがままに世界を見るというドン・キホーテの話を、狂信的なテロ事件のニュースに触れるたびに思い出すという。 ヴァルガさんが弾いた「鳥の歌」もかつてカザルスが語ったように、" peace, peace" (下記)と鳴いていたのではないだろうか・・そんなことを思いながら聴いていた。
カーテンコールで舞台袖にもどってくるヴァルガさん![]()
今回ヴァルガさんと九響、という夢のようなコラボだったが、ぜひまた来ていただきたい。
舞台袖との行き来の際に、足を引きずりながら歩いておられたがお身体は大丈夫だろうか。
1969年生まれのヴァルガさん、まだ50代とお若いので益々のご活躍をお祈りしています。
打楽器陣も大活躍![]()
ブラボーなお三人![]()
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(左からキンボー・イシイさん、杉田恵理さん、タマーシュ・ヴァルガさん)
*以上の九響の写真はすべて公式facebookよりお借りしました
この演奏会の記事が「毎日クラシックナビ」に掲載されていましたので載せておきます。










