『天皇と国民をつなぐ大嘗祭』 | えにーの読書感想文

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読んだ本の説明や感想なんかを書いていきます。主にミステリーや歴史・皇室関係についてが多いと思います。
未読の本の内容を確認する際にも参考になれば幸いです。



『天皇と国民をつなぐ大嘗祭』

高森 明勅、展転社、2019年




今年も参賀は行なわれませんでしたが、天長節をお祝い申し上げます。


本書のテーマである大嘗祭。歴代天皇が、即位後初めての新嘗祭にて行なう一世一代の祭祀ですね。その歴史を解説されています。



そもそも大嘗祭の母胎となったのは、大化より前からある農耕社会としての我が国に普遍的な祭りであるニイナエで、万葉集にもニイナエに関連した歌が二首載っているそうですよ。



我が国最古(3世紀後半)の王墓とされる纏向遺跡からは祭祀とみられる遺跡が出ているとのこと。

遺跡から復元され内容は、稲籾を脱穀し炊飯し盛り付け儀礼ののち共食する過程が考えられるそうで、今の新嘗祭や大嘗祭とも近いものですね。第11代・垂仁天皇の時代には天皇直属の神聖な田ができていたらしいです。



5世紀に入ると日本書紀にも皇位継承儀礼がみえるようになります。第19代・允恭天皇の即位のときに天皇の璽符みしるしを捧げたと書いてありますし。

養老令の規定でも「皇位継承の当日には、中臣なかとみ氏が「天神あまつかみの寿詞よごと」を読み上げ、忌部いんべ氏が神聖な鏡と剣を献上せよ」とあるそうです。

そして、即位に際して高御座が設けられた初例は日本書紀によると第21代・雄略天皇の即位のときだそうです。



新嘗祭は朝廷の内部で完結する神事であるのに対し、大嘗祭は地方在住の民たみの奉仕が主体となります。

確かに悠紀田ゆきでんと主基田すきでんを決めて稲を奉納したり、大嘗祭だけは国家の諸身分のすべてを貫く奉仕態勢をもった。これによって天皇統治の普遍性を御代ごとに再認識する意義を担ったというのですね。

つまり大嘗祭とは、国家の統一と国民の統合を御代ごとにたしかめる祭儀だと高森氏はいいます。



さらには、日本国憲法で天皇に対して日本国の象徴であることを求めていることに触れ、国家の構造性と歴史性をトータルに包み込み国民の統合を祭式的に体現する大嘗祭こそ、皇位継承儀礼として最も欠かせないものであり憲法が求めるものだと主張されています。

天皇に国民統合の象徴であることを求めるのだから、それを体現する大嘗祭はむしろ行われなければならない。

このご意見は眼から鱗であり、激しく同意しますねー。



すめらぎいやさか!