『月の扉』
石持 浅海、光文社文庫、2006年「そのとき、私は『あちら側』へ行ける」
沖縄・那覇空港で乗客240人を乗せた旅客機のハイジャック事件が発生。犯人グループは勾留中の男を空港まで「連れてくる」こと。
犯人グループは全員で3名。それぞれ武器を持ち込み赤ん坊を人質にとって警察側と交渉を行っていた。
しかし、乗客の一人が機内のトイレで死体となって発見されたことで状況が一変する。死者の腕にはカッターナイフによるものとみられる切り傷があり、それによって失血死したようだった。
犯人グループが事件の解明に指命したのは同じく乗客の“座間味くん”。現場のトイレには誰も近づけず誰が凶器の出所も不明。ハイジャッカーたちの犯行動機も謎に包まれ五里霧中の状態に。
ハイジャックされた機内という極限状態での死という不可解な謎に“座間味くん”の推理は。
石持シリーズは、特殊なクローズドサークルでの事件が一つの魅力ですが、今度はハイジャックされた機内での事件。
事態の収拾のために探偵役として指命したのが死体発見に遭遇した座間味島のTシャツを着た青年(本名は不明)。ハイジャッカーたちに“座間味くん”という渾名をつけられた彼が極限の推理を披露します。
事件の背後には殺意や悪意など様々な感情が入り交じっていて、最後の最後まで警察の科学捜査が一切介入できない状態で事件が解決されていくのは、まさにミステリーの醍醐味です。